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2005年5月 9日 (月)

苦労するから生き方もへったくれもない…

法事があった。
三月末に亡くなった嫁の祖母の四拾九日。


法事にまつわるこんな話。
以前にある人(年上だが相当の偏屈者)と話していて、こんな言葉を聞いてテンションをかなり下げられたことがある。
「いやね、僕法事に出るのが嫌いなんです」と彼。
「何で?」
特に悪びれる風でも無くヘラヘラと続ける彼。「だってね、僕、弟がいるんですけどね。こいつが出来が良くてね、いつも比較されるんですよ」
その彼は、40近いにもかかわらず定職に就かず、親と同居し日々を過ごしている。別に不具者とかそういう訳ではなく見た目も言動も至って普通の人間。いわゆるパラサイト。
だが困った事に仕事を長く続けられない。そして致命的に理屈っぽく、一番厄介なことに言動と行動が全く一致していないのだ。
「あぁそうなんだ…」あぁさっさと会話を切り上げたい。
「それでね、弟がしっかりしている割りにお前は何だ、と。親戚と顔を合わせる度にそう言われるんですわ、ハハッ」
(そら言うわな…俺が親戚でも)心で思っても口に出来ない。やたら理屈っぽいから思わぬ方向からカウンターを返して来るのが目に見えているからだ。こちらの言いたい事を言えない時ほど疲れるものはない。
そんな話をいい加減聞くだけ聞かされて、僕のテンションと生命力はガタ落ちしたのだった。
きっと彼の場合、一事が万事そんな感じなのだろうということは想像に難くない。
それ以来法事と聞くと彼の姿を思い出す。そしてああはなりたくないと自分を戒めるようにしている。これぞ反面教師。


少年時代、『台風クラブ』という映画を見たことがある。御存知の方も多いと思う。
いわゆる学園ものではあるが、普通は取り上げないような思春期に誰もが感ずる非常にデリケートなテーマに真正面から取り組んだ作品。強烈な印象として残っている。
そのデリケートなテーマとは…生と死、そして性。

全編を通して、何かこう…上手く言えないけど、汗臭さを感じてしまうような、息苦しいようなもどかしいような(なんだソレ^^)。そんな青春映画。ただ決して明るくは無い。それが恐いくらいリアルだった。
記憶に残っているシーンは幾つもある。中でも教師役で出演していた三浦友和が、法事かなんかの席で酒に酔っ払って普通の大人になってしまっているシーン。
生徒の前や普段学校では決して見せる事の無い、教師ではない只の大人の姿。だから弱音も吐く。そして情け無くカッコ悪い。生徒としては絶対に見たくない先生の姿。
監督の意図は分からないが、映画の製作者がどうでも良いシーンなど残す筈がない。僕の勝手な捕らえ方ではここが最も重要なシーンだと思っている。
その教師の生の姿を垣間見た生徒が、台風が去った翌朝、校舎の窓から飛び降りるのだ。頭から。
僕がその生徒の立場だったら、飛び降りはしないまでも恐らくは衝動的に何かしてしまうかも知れない…と思った。
子供とは、本当に真実を見抜くまなこを備えている。こんな映画を創り上げた監督は、子供の視点そして子供の心を持ち続けている人なのだと思う。

20年以上経った今でもこの三浦友和のシーンが時折蘇ってくる。カッコ悪いけれど、紛れもなく生活と格闘している大人の姿。
そして今、当に自分がその状況にあるのだと痛感している。
少年時代にこの映画を見ておいて良かった、と思う。少しでも客観的に自分を見る事が出来ているという意味で。これも反面教師。

割りと近しい人に対しては自分を虚飾する事も可能かも知れない。だけど身内だけは騙せない。生身の人間性を問われるからだ。しっかり見られている。身内に対し、格好つけようとする姿ほど滑稽なものはない。自身の振る舞いを通して裸で勝負するしかない。


最近こんな記事を読んだ。
短文ではあるが非常に感銘を受けたので、一部を原文のままここに転載します。

【ともあれ生き方の問題】
”(前略)全く、生きていることは苦労がつきまとうものだ。生き方もへったくれもありはしない。
(中略)私は小説を書く仕事をしているが徹夜はしない(できない)。
朝はとりあえず、掃除と洗濯をし、午後にはスーパーへ行って夕食の買い物をする。トイレは汚れていると思ったら、即、掃除。ゴミは溜めない。そうした心掛けで家の中は最低限の秩序が保たれるのだ。
生きるということは、そうした雑多な生活のあれこれをこなし、冠婚葬祭の義理を果たし、人に不快を与えない程度に身ぎれいに暮らすことに尽きる。…(後略)”
(宇江佐真理 第三文明2005年6月号より)


そうだ。
生きるということは…。
その通りなのだ。


普通に暮らし、普通に生きるということ。
それが実は一番の力技なのかも知れない。

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