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2005年7月 9日 (土)

格闘

帰宅すると嫁が涙目で訴えてきた。
またチビすけとヒトモンチャクあったか?と思いきや、和室に何かがいるという。
それが何かは分らない、確認する前に逃げてきた。
ただ触角だけが見えたと。
その瞬間僕は、己の義務を悟った。


こちとら仕事で疲れ果てて一刻も早くご飯と食べるかお風呂に入るかしたいのに。
で手渡されたのは今朝の中日新聞丸ごとと、そして未開封の「瞬間・凍結なんとかコロリ」なるもの。

ヨッシャ任せとけと父ちゃんカッコよく後ろ手に和室の襖を閉めていざ戦場へ。
まるでエイリアン第一作目、火炎放射器片手にダクトの中に入ってゆく宇宙船ノストロモ号のダラス船長のようだ。
自分が入ったダクトの入り口を溶接までさせて。凄い勇気というか根性。
alien_daras
最終的に彼は繭にされてしまうが。
そんな忌まわしいシーンを振り払いつつ。断固たる決意で。


少しの音も聴き逃すまいとエアコンはOFF。そうカサカサ音や羽根音だ。
実際、ちょっと聞こえてくる。確かに、いる。
じんわりと汗ばんでくるがそれが冷や汗か何なのかは分らない。
今にも胸から飛び出すんではないかといわんばかりの心臓の鼓動。

和室のテレビの上部分、エアコンのすぐ脇の鴨居の裏側にさっきチラッと触角が覗いたのを僕は確認した。
恐る恐る。慎重且つ慎重に。テーブルに登り、片足をテレビの上に掛け、そして最終的にターゲットが目の前わずか30cm以内のポイントに間違いなくいるところまで接近した。
新聞紙を丸めたのを左手に持つか右手に持つかで一瞬悩んだ。何故なら利き手の右手首は先々週に捻挫してからまだ完治していないからだ。
しかし体勢上右手に新聞紙では効率が悪いことを鑑み、いざという時は玉砕覚悟で左手に丸めた新聞紙そして右手に凍結殺虫剤を構え臨戦態勢に入った。

逃げ場はここしかないと確信する箇所から強烈な一撃(と言っても腰の引けた体勢で飛び出したスプレーノズルの先端をターゲットに向けて噴射しただけだが)をオリャーとばかりに食らわしてやった。
次の瞬間。気がふれた様に鴨居の裏で暴れまくるターゲット。一瞬、姿を見せた。腰がくだけそうになった。
だが次の瞬間また姿を隠し、鴨居の中を右往左往している音だけが聞こえる。

ここまで来たら行く所まで行くしかない。
何しろ無言で戦っている父ちゃんの生還を隣のリビングで待っている家族がいるのだ。ここで朽ち果てるわけにはいかない。僕には戦う理由があるのだ。
・・・などと冷静に考えれる状況では決してなくその時の僕の目的はただ一つ、確実にターゲットを仕留めることのみだった。
音のする部分に集中砲火を浴びせ、そして遂に全く生きている気配がなくなるところまで持ち込んだ。
気がついたらスプレー缶が軽くなっていた。殆ど使い切ってしまったようだ。
だがまだ鴨居の裏側に間違いなくいるそいつ。確実に息の根を止めた手ごたえはあるが。
でもどうしてもそれを確認することが僕にはできない。
絶対に、出来ない。


「終わったよ」
精も根も尽き果てて、リビングの扉を開けた時。
そこにはテレビでお笑いを見てガハハっと笑っている妻と子供の姿があった。「あ、終わった?ご飯にする?」
か軽いね・・・。
俺さ、泣きそうだったんだぜ。


ま、子供の無邪気な顔見るとさ、さっきの辛さなんか全~部吹っ飛んじゃうんだけどね^^

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