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2005年8月 8日 (月)

Stand By Me

スティーブン・キングの名作。
いやベン・E・キングの名作と言うべきか。キングつながりだ。
個人的にはジョン・レノンのヴァージンの方が絶対的に好きだけれど。


この映画が公開されてから後、それはいまや少年時代に誰しも必ず通る関所のようなものの代名詞となっている。
勿論、僕もその関所を通った。少年としての立場で。仲間と一緒に。


でも少女(女性)の場合はどうなのだろう。
「あれが私のStand By Meだった」と呼べる節目ってあるのだろうか。
きっとあるのだろうとは思うけれど、少年と少女では(上手く言えないけれど)決定的に違うものがあるような気がしてしまう。
少年が男になる時。少女が女になる時。
やっぱり、違うだろうなあ。
だって、6年生の時の同級生の女の子って、やっぱり大人びてたもの。
男の子なりに、感じてないようで実は感じているんです。俺らって、オボコイよな って。女子には敵わねえな って。


細江君と、小田君と、僕と、あと数人。
作戦会議はいつも放課後に僕の家で行なわれていた。
初めて自らの意志でもって学区を大きく飛び出すこと。絶対条件は親の援助は一切受けないこと。
まずこれが最初に越えなければならないハードルだった。

歩いて行ける距離ではない。
とは言え自転車で行くのもどうも冴えない。夏だから暑かったし、何より交通機関を自分の意志で使うことがまず大事なポイントだったのだ。
アクセス手段はバスだ。名古屋氏交通局の市バス。どこまで乗っても区間内なら一律幾らで済む事は調べが付いていた。みんなお母さんと一緒になら何度も乗ったことがある。
でも問題は、誰一人自分だけで乗ったことがないことだった。


目的地。
名古屋港の手前の築地劇場。
時間帯によってそこは成人映画の劇場にもなる。
でも僕らの目的は当然のことながらそんなものではない。興味があったことは否定しないが。でも幾らなんでも小学生の分際でそんな大それたことは出来ない。
その時その劇場では、夏休み特別企画である映画が上映されていたのだ。

それはそれは豪華な、これを逃したらもう二度とチャンスは巡って来ないと確信できるメニューだった(事実それが最初で最後だった筈)。
それは、「宇宙戦艦ヤマト」と「さらば宇宙戦艦ヤマト」とあと何故か「海のトリトン」の三本立てが上映されていたのだ。
海のトリトンはどうでもよかった。事実、それは観ずに帰ってきた。


作戦会議の議題。
まず一つ。バス代が幾らするのか。いつも母さんに払ってもらってたから僕らの誰もそれを知る由もなかった。
二つ。映画の時間はどうなっているのか。またそこから逆算していつ出発したら良いのか。何しろ三本立てだ。一本逃すととんでもないことになる。
三つ。途中でお腹が空いたらどうするのか。また、トイレに行きたくなったらどうするのか。

数度に亘る綿密且つ慎重な会議の結果、一つ目と二つ目の議題はクリヤすることが出来た。
でも三つ目だけは、現場で出たとこ勝負になるしかないという結論に達した。


そして作戦決行当日。
大にして大抵こういうときに限ってトラブルが発生する。僕達も例外ではなかった。
小田君が出発直前に急にお腹が痛いと言い出し、出発予定時刻を大幅に遅れることになってしまったのだった。

チームの中に途端に諦めムードが漂った。
もうダメだ。今からバス停に走って次の次の次の次のバスに乗ったとしてとても間に合いそうにない。
折角だからヤマトの一作目から観たいところだったのだけれどどうやら二作目から観て後で一作目を観るハメになりそうだ。しかも間にどうでもいいトリトンを挟むわけだ。

とは言え今更小田君を非難する気も起きず、すっかりテンションが下がった僕達が重い足取りで出発しようとしたその時、救世主が現れた。
何と、細江君のお父さんが劇場まで僕等を運んでくれるとの事。しかも今からだったら一作目の上映時刻に絶対間に合わせてやるとのお済付き。途端に生き返ったようにはしゃぐ僕等。


結果、見事に僕達は一作目から観ることが出来た。
途中お腹も空いたし、トイレにも行きたくなったけれど、受付のオバチャンがとてもいい人で顔パスで劇場の外まで出入りさせてもらったりした。


綿密に立てた計画は全て水の泡と化したけれど、結果だけは完璧にオーライだった。
その事で有頂天になり、肝心の映画の方はあんまり記憶に残っていない。

でもその時僕達は、窮地に立たされた時でも、決して諦めなければ必ず道は開けるのだというこれから始まる人生について、とても大切なことをその時に間違いなく学んだのだ。
・・・と思う(笑)


テレビのCMで、この歌を聴いてそんな昔のことをちょっと思い出してしまった。

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