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2005年11月 3日 (木)

先生コワイ

厳しいと評判の先生がいる眼科へ行った。


先生曰く。

「アンタの手は汚いんだよ!それをまず一番に認識しないとエライ事になっちゃうんだよ!」
聞く側はただでさえ涙目なのに更に一層輪をかけて涙目になってきている。

「アンタに全くそういう意識がないから回りの人間が迷惑するんだよ!アンタのような人こそ『自分は汚いんだ、菌を持ってウロチョロしてるんだ』とハッキリ認識しなきゃいけないんだよ!アンタみたいな人間がいるから何時までたっても感染が拡がるばかりなんだよ」
聞く側はもう既に相槌を打つしかないところにまで精神的に追い込まれている。

「わかった?お?家族からも隔離!一緒のお風呂もダメ!仕事も当分休みだぞ!周りに伝染るから」
そして先生は最後に吐き捨てるようにこう付け加えた。
「ったく」


確かに、厳しかった。
恐い位に厳しい先生だ。おまけに口が悪すぎる。

いや、僕にではなく前の患者さんに。


僕の診断はアレルギー性結膜炎とのことだった。
しかしウィルス性結膜炎の疑いも無きにしも非ずの為症状の観察を要請された。

前述の厳しいお言葉は全部、僕のひとり前の患者さんに浴びせられた言葉であった。
それは病院中に響き渡る烈火の如き罵声にも近いものであった。

ひとり前の可哀想な患者さんとは歳の頃30代前半と思しき女性であった。
彼女の眼帯の下の眼がもはや結膜炎のせいではなく、打ちひしがれた涙で一杯になっているに違いないと僕は想像した。
僕でも、多分泣く。そこまで言われたら。

まるで自分に言われているような気分に段々なってきた僕は、中待合室で待っている間、まんじりともせず冷水を浴びせられたようにただ打ち震えていたのであった。
次は自分の番だと。


僕の診察を終えた後、先ほど言いたいことを全てぶちまけた先生はスッキリしたような顔で僕に言った。
「さっきの聞いてたでしょ?あなたも同じことになる可能性があるんだから気をつけて下さいね」
さっきとは打って変わってそれはそれは温和な表情であった。
僕は心から同意し、ただただ「はい!はい!」と答えるのみだった。

分った。
どうやらこれが先生のやり方のようなのだ。
中待合室の患者さんにも聞こえるように厳しい指導をされておられるのだ。
そうに違いないのだ。きっと。


しかし。
にしても。


ひとり前の血祭りに上げられた女の人へ。

僕は心からあなたに同情の意を表します。

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