ミッドライフクライシス
取引先さんの工場へお邪魔しようとして朝一でアポを取る。
で30分後にお邪魔しますと約束する。
通りがかりの感じのいい喫茶店で時間を調整する。
時間的にもまだ充分モーニングサービスにも間に合う。
ゆで卵とトーストを齧りながら中日スポーツをめくる。
大体僕はあまり野球にも興味が無いし今の中日も落合監督が好きだからなんとなく応援している程度だ。だから理由も無くただなんとなく、中スポを手に取っただけである。
で何気なく芸能欄の記事に目を落としているとその中のある部分で目が留まる。
小さな枠で囲まれた記事だ。
それはパックンマックンのパックンが書くコラムであるようだった。
しかしそれが大変に面白く、飲みかけの珈琲を思わず噴き出してしまいそうになった。
それは「ミッドライフクライシス」というタイトルのコラムだった。
詳しい全文は忘れたが記憶を頼りに書くと概要こんな記事である。
『ミッドライフクライシス』とは直訳すると『中年の危機』。
これに相当する日本語は存在しない。
その症状としては中年に差し掛かったオヤジがある日突然豹変することをいう。
軽症のうちはまだいい方で突然趣味嗜好が変わったりする程度。
例えばそれまでずっと国産車で満足していたのがある日突然真っ赤なスポーツカーに乗り換えたりする。
またある日突然自分の名前を「トミー」などと英語読みにすることに決め、そしてクラブ通いを始め縦ノリで踊ったりする。ちなみにこの場合のクラブは彼らの中ではディスコに相当するのだそうだ。
しかしそれが高じると突然仕事を辞め髪の毛をモヒカン刈りにしたりして「今日から俺はプロのミュージシャンを目指す」と宣言し周囲の度肝を抜いたりする。
またこれが重症になると長年連れ添った奥さんに突然離婚状を叩きつけそして別れた挙句に何を血迷ったか娘の高校の同級生といきなり結婚しようとしたりする。
・・・らしい。
怖い話である。
理由は様々考えられているが、中高年に差し掛かり、肉体的にも精神的にも衰えを感じている自分への抵抗なのだそうだ。要するに若返りたいという欲求か。
実際パックンも自分の目で直にそれを見るまで本当にそういう現象があるのか信じられなかったという。
そのパックンが出会った光景はこうらしい。
ある中年オヤジがバイク屋の前で買いたいバイクを物色している模様。見るからにバイクとは縁遠い感じの冴えないオヤジである。
そしてそのオヤジ、店員さんにこう尋ねていたそうだ。
「ぶっちゃけ、この中で一番女の子にモテるのはどれだ?」
若い店員さんが訝しげに売れ線のバイクを勧めるとやにわにそれにまたがり
「俺、どう?」
みたいな熱い視線を店員さんに送っていたそうである。
パックンは思ったそうだ。
これがそうなのか。これぞ急性ミッドライフクライシス。しかも末期。 と。
さすがパックン、単に日本語が堪能な芸人さんなだけではなく伊達にハーバード出てる訳じゃないマジで博識な人のようである。
中でもこのコラムで一番辛辣だと思った部分がある。
「大量破壊兵器の存在を理由に中東の国を攻撃し続ける某国の大統領も完全にこれに当てはまる」
・・・のだそうだ。
アメリカ人であるパックンがこう言うのだからなおさら重みがある。
少し気になったので調べてみると、ミッドライフクライシスの症状の中にはこんなものもあるそうだ。
「青春時代のロマンチック歌曲への回帰」
僕は今、こう思っている。
僕がジョンに憧れコピーバンドで演奏しそしてジョンに近づきたいと思うこの気持ちが断じてミッドライフクライシスなどではないと。
僕はただひたすらそう願うのみなのである。
大体、僕にとってビートルズはリアルタイム世代ではないし。
だから、大丈夫。
でもそんな中、往年の5人時代のオフコースを懐かしがる僕もいる。
・・・それって。もしかして。
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