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2006年4月 1日 (土)

3121

それが本名だと知ってから僕はその人に妙な親近感を抱くようになった。
それまでは、自分を誇示・鼓舞するためにそのような名前を立てていると思い込んでいたからである。


初めてその音を聴いたのはいつだっただろう。高校1年の時か。
確かテレビで放送されていたグラミー賞の授賞式か何かでボディガードに囲まれて颯爽とステージに現れそして「Purple Rain」を歌いギターを弾き倒しスタンディングオベーションを浴びている姿を目の当たりにした時だったと思う。
記憶ではマイケルジャクソンも同じ会場にいて、サングラスを取るだけで嬌声をあげている熱狂的ファンの姿を僕は冷めた目で見ていた。それはビートルマニアに対するストーンズのファンの心理か?よく分からないけれど。
まあとにかく僕はそれ以来「プリンス」の虜となってしまったのであった。
お陰でデビューアルバムから順に全て聴かずには居ても立ってもいられなくなってしまったのである。


高校の時は割と耳の肥えている友が常に廻りに居たから浮かずに済んだのだが、社会に出てから僕はプリンスを好きだという人と不幸にも出会ったことがない。考えてみるにやはりそのセクシャルで変態チックなイメージが大きくブレーキとして作用し、公然とプリンス好きであることは内面の変態性を吐露するようでうっかり口に出すということが憚られるに他ならないと思ってしまうのだがどうだろうか。何しろかく言う僕もプリンスが好きだと公けにいうことに対しては少々抵抗があるにはあるのであるが。

正直に告白すると、僕はプリンスの音を聴くことが非常に気持ちいいのである。
どういう言い方をすれば一番適切かと考えてもただ気持ちいいとしか表現のしようがない。
一部分を聴いただけで即プリンスの音だと僕は判断出来る自信がある。まるでビートルズの音もそれと同じように感じるように。


過去にこんなことがあった。
ビートルズのアンソロジープロジェクトが立ち上がり、そして大晦日ににそのダイジェスト版が放映された頃のこと。小宮悦子さんのナビゲートだった。
その少し前に、FMで「ビートルズの新曲」が先行でオンエアされていた。「FREE AS A BIRD」である。
そういう曲が発表されることは知っていた。しかしその頃の僕は他ごとで頭が一杯で(恐らくその当時付き合っていた女の子のこととかそういった類のことだと思う)、ビートルズどころではなかった。
そして車を運転している時、DJが何かを喋り終えた途端、一瞬の間を置いたあと出し抜けにラジオから ダン・ダン というスネアの音が聴こえて来た。
瞬間的に僕の背筋を何かが走り、全身に鳥肌が立ったことを覚えている。
ほんの僅かの時間、コンマ何秒かで僕はそれをビートルズの音だと悟ったのであった。しかし聴いたことのない歌だった。でも間違いなくこれはビートルズだ。だって、ジョンの声が聞こえてくるじゃないか。
思わず車を停め、口を半開きにしたまま僕はそれに聴き入った。
これが、僕の唯一のリアルタイムで感じたビートルズである。


でプリンスであるが、正直なところここ最近のものはあまり好きになれなかった。気持ち良くなれなかったのである。
幾らプリンスたる人であろうとやはり人の子、老いて勢いは枯れてしまうものなのだろうかと…畏れ多くも僕はそう思うに至ってしまったのであった。
しかしこの「3121」は違う。僕の中で勝手に創り上げたプリンス像が間違いなくここにある。音が、気持ちいいのである。それはもう、理屈ではない。
僕個人的には、非常に密室的な音のする「Sign of The Times」辺りが非常に好きなのであるが、「パレード」の時のような倒錯しているといっても過言ではないラジカルで訳の分からない感じもある。アルバムのライナーにも同じような表現があるが、プリンスが「発明」した音の洪水がここには溢れているのだ。ぞくぞくする。
密室ファンク。下半身にガツンと来る感覚。んーよく分からないが。

頼もしきプリンス殿下、健在である。
「3121」(Thirty-One,Twenty-Oneと読む)の意味は全く分からないけれど。

3121

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