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2006年5月21日 (日)

急がば回れ

ある用事でJR四日市駅の近くまで行こうとする。人と待ち合わせをしているのである。


今日は、奥さん方の祖父ちゃん祖母ちゃんのアルファードを一日預かっていた。だからその時も、使わせてもらった。こういう大型の乗用車も慣れれば楽チンなのである。しかもナビ付いてるし。でこのナビ。当然のことながら検索機能がある。ルート選択のオプションで「推奨」や「一般道優先」また「距離優先」等々。
極端な方向音痴である僕はこのテクノロジーには非常にありがたい恩恵を今まで沢山受けている。
またナビゲートして貰うことにより今まで知らなかったルートを発見できるという感動もままある。ナビとは全く素晴らしいものである。


ところがちょっとしたことで約束の地まで向う出発予定時間を少々遅れてしまった。
別に急いでもいない時なら普段走り慣れた道を適当に走っていくのであるが、今は約束がある。遅刻するわけにはいかない。だからナビに任せて最短時間・最短コースで行こうと考える。
こういう時こそ急がば回れ。じっくり確実に歩を進めていくのだ。焦って知りもしないとんでもない道に迷い込んでしまっては元も子もない。ただでさえ自他共に認める極端な天然の方向音痴な僕なのである。

で車を停めてピピッと入力。目的地は取り敢えず「JR四日市駅」とする。でまた取り敢えずルートは「推奨」コースを選択。
はは~ん。23号線に出るわけね。まあ多少遠回りではあるが無難な線でしょうな。でも何だか当たり前すぎるルートだな。こんなんならわざわざナビして貰わなくてもよさそうだ。
で、ディスプレイには所要時間約25分、目的地までの距離11.6kmと表示される。まあ、いいか。

で走り出すと途端に無機質な女性の声でアラートが入る「この先、渋滞があります」。
なるほど。そう来るのね。
でもう一旦停止。うんうん。急がば回れの精神だね。・・・とは言いつつ。かなり焦って来ていることは隠し様のない事実ではある。
再度タッチパネル上の「再検索」のボタンを押す。渋滞しているなら時間は読めない。ならば次は「距離優先」だ。

で結果が表示される。
所要時間は同じく約25分。ところが距離は大幅に削減されて「8.6km」となっていた。

…何だこの差は?
このナビちょっといかれてんじゃないか?何でこれを「推奨」してくれないのさ。しかも最初は渋滞しているルートを「推奨」しやがって。お前おちょくっとんのか。で迷わずこのルートを選択する。
こんなんだったら最初からこっちにしときゃ良かったんだよ。新鋭ナビとはいえ万能じゃないな。所詮は杓子定規な機械ってわけか。
さっきはナビって素晴らしいものだなんて書いたけどさ、こういう現実に直面すると別に大したことないなあ。やっぱり機械に頼るってのはロクなことにならないんだよ。うっかり余計なガソリンを消費してしまうところだったぞ。いい加減にしてくれよ。ただでさえ世知辛い渡世なんだ。
もうお前の魂胆は見えたぞ。俺を嵌めようとしたんだな。もう騙されないぞ。


と、鬼の首を取ったような誇らしさに包まれた僕をそれでもナビは健気に案内している。
「300メートル先、右折です」
おーよしよし。それでいいんだよ。とっとと案内しやがれ。
で何?右だ?そこは通ったことないぞ。なかなか粋な道を選択するじゃん。どれどれよーし曲がってやろうじゃないの。

で。


…え?
ここ??

コレ曲がるの??
ここ信号ないけど?いいの??
あ…曲がっちゃったよ。
でもだって…メチャ細いよ?この道。まさかと思うけどこれ自転車用通路じゃないの?
普通の人はここ入らないでしょう。クルマでは。絶対。

…だってしかもこのクルマ。
アルファードだよ??
しかも預かりもんなんだよ。ちょっとでも擦ったら立場上ヤバいんだよ。あのさあ、勘弁してくれよ。


その後、僕はさんざんやたらと細い(いや細過ぎる)道ばかりを延々と走らされることとなったのであった。それが軽ならまだしもアルファードで。
だからといって今さら引き返そうにも切り返しなど到底いや絶対に不可能だ。とにかくこのまま前進するしか手がないのだ。
その時の僕の唯一の願いはお願いだから対向車だけは来ないでというただその一点のみであった。いや違う。それは対向車などというレベルではなく人が一人歩いているだけで完全に立ち往生してしまう程の道幅であったのだ。

途中何度も一旦停車しながら電信柱や民家の壁をひとつひとつクリアしそして背中や脇にじっとりと冷や汗をかきつつ思い返してもゾッとするほどの数々の難所をくぐり抜け何とか無事に僕は目的地へ到達したのであった。
所要時間は…35分。しかも遅刻もしてしまったわけである。


この時僕は、このルートを「推奨」としなかったナビの心憎いまでの有り難い(本当に有り難い筈だった)そして運転者に優しい心遣いに対して、泥を塗りつけるような筋違いも甚だしい程の憤慨をしてしまったことについて心から謝罪の念を抱いたのである。
ナビよ。スマン。俺アンタに濡れ衣をかぶせてしまったようだ。アンタが正しかった。「推奨」という言葉の裏には、こんなヤバい道に俺を迷い込ませないでおこうという配慮があったのだな。
しかも出遅れた自分の責任を棚に上げて。
ナビよスマン、バカな俺を許しておくれ…。


確かに、最初の推奨ルートで入ったとしても軽い渋滞を含め所要時間はそれ程変わらなかったのかも知れない。まあそれは知る由もないけれど。
でも思い返すとその時、少しでも早く到着しようと無意識に「欲」を出したのは事実だ。


いろんな角度から改めて『急がば回れ』の意味を考えさせられる一連の出来事ではあった。

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