« 病は気からか | トップページ | 瓜二つ »

2006年7月29日 (土)

耳コピ

ガチャッと玄関の扉を開けて僕が帰宅すると出迎えてくれる彼女らの口からまず出る言葉は「パパ仕事行ってきたね?」である。開口一番である。
その後は矢継ぎ早にこう来る。「パパ、ミッキーさんみる?ねえミッキーさんみる?みよか。ミッキーさんみよか。ちょこっとだけ」
僕が靴下や服を脱ぎながらあしらっていると執念深く暫くミッキーさん鑑賞希望を繰り返した後でようやく思い出したように「あー、おかえり」と言って貰える。
まず僕が仕事から帰ってきてゆっくりするだろうことを確認した上でミッキーさんを観たいことを訴えてそれがどうも今すぐは叶わないと悟りようやく労いの言葉が出るという寸法である。

ミッキーさんとは勿論ミッキーマウスである。英語の教材ビデオ。今彼女らが一番夢中になっているメディアだ。
当然ながら彼女らは英語の勉強をしているという意識は全くなくただ単にミッキーさんやミニーちゃんの映像を観たいだけなのである。
別にそれは買ったわけではなく(我が家にはそんな余裕はない)もうそれを卒業したご近所さんから借り受けているものだ。借りているとはいえもう既に返却できるような状態にないのが事実ではある。ビデオの背中のステッカーは剥がされ、そしてケースのビニール部分は見るも無残に破れている。どうやって補償したらいいのだろう。情けない言い訳しか浮かんでこない。


でそのビデオ、僕も一緒に観ろと何度も繰り返し見せられている。英語の字幕が出るから僕まで知らないうちに歌詞を暗記してしまっているほどである。
だが驚くことに彼女らはビデオと一緒になって歌っているのよさ。キチッと。
当然アルファベットで書かれた字幕の英単語が読めるはずもなく、要するに耳コピだ。
僕のような大人になってしまうとどうしてもまず目で歌詞を読んでそしてたとえ文章の意味は分からなくともとりあえず単語を理解した上で歌おうとする。
だが彼女らの取り組み方は根本的に違う。聞こえてくるままを発声しているのだ。確かに、まだ舌足らずだから正確な発音など出来てはいない。例えば「sing」は「チング」、「one,two,three」は「ワンツッチー」となる。だがそれが歌に乗ると自然に聞こえてくるのだ。親のひいき目なのかも知れないが。


妻曰く最近彼女らは「エポゥ」「トメィトゥ」「バナーナ」と言うらしい。
よく嫁の実家に遊びに来ている準親戚のオバチャンはそれを見ると「ダメでしょ!日本人ならちゃんと林檎トマトバナナって言いなさい」とたしなめているらしい。
彼女らに将来は世界を舞台に飛び回って欲しいと密かに願っている僕としてはそれが正しい指導なのかどうか非常に悩ましいところなのである。まあ、まずは外国語以前に最初に母国語ありき だとは思うが。
だがまず彼女らは僕の子供の時代には有り得なかった環境下にいることは間違いない。
三つ子の魂百までじゃないが、少なくともビートルズの歌詞をそらで歌えるまでに覚えるだけで四苦八苦している僕などよりは遥かに語学力の優れた大人になって欲しいと思う。

|

« 病は気からか | トップページ | 瓜二つ »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 耳コピ:

« 病は気からか | トップページ | 瓜二つ »