ALL BY MYSELF
15年前。
あるテレビCMで流れていた歌に触れて以来、それがどんな歌なのか必死に探した経験がある。
スポンサーである製造メーカーに直接問い合わせようかと思い詰めたほどである。さもなくばレコード屋に行くかラジオ局に電話をかけて「フフーンフーンフン」などと口ずさんでその曲の正体を教えてもらおうかとも考えたりもした。マジで。
でもまあ別に無理せずともいずれ自然な形で知ることになるだろう、と思ってはいた。何らかの形で。
その頃はウィンドウズ95すら存在しておらずインターネットのイの字も知らなかった古き佳き時代。
手がかりは耳に残る「ホーバーマァイセルヘェ」というフレーズのみ。
辛うじてコードは聞き取れた。E→G#m7→D6/C#7→F#m/Am・B7onC…。D6が物凄く効いている。
でも曲名が分からないでは話にならない…。
知りたい。一体誰が歌っているんだ。
歌に対して一目惚れという言い方は変だが、揺さぶられたのである。
コードに、メロディーに、そして声に。また鳥の目線からの空撮の映像も素晴らしかった。
そのCM期間が終わってしまってからもその映像や音や声は僕の目と耳にいつまでも残り、色褪せるどころか輝きを増し続けた。
だがそれ以来どうしてもその歌に巡り合うことが出来なかった。手がかりのかけらも無いまま時間だけが流れた。
そして何年か経った後のこと。
車の運転中、ラジオから突然その歌が流れた。
心の準備も何も出来ていない全くの無防備な状態で、出し抜けに僕はその歌に晒されてしまったのだ。
運転中にも関わらず、僕は不覚にも流れ出る涙をどうしても止めることが出来なかった。
今という時代は、便利で恵まれている。
良いか悪いかは別として。
いとも簡単にこうして再びその映像と音に触れることが出来るのだから。
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