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2008年3月27日 (木)

セル

率直な感想を。
キング氏、書き方随分変わってしまったのではないか。


昨年11月に店頭に並んでいるのを目にした時、かなりのキング好きのはずが即手に入れなかったのは何故だったろう。
なんとなく、氏の最高傑作(と確信している)「スタンド」の匂いを嗅いだからだろうか。
ストーリーについては申し分ない一級のホラーというかゾンビものというか人間ドラマというか。行間から映像が目に浮かんでくるようで素晴らしいです。
しかし、です。
読了した後も、読んでいた最中も、常に僕に付きまとって離れなかったのが冒頭の感覚だったのであります。
もちろんそれは僕の勝手な期待に過ぎないのではありますが。


スティーヴン・キングの作品で最も僕が感銘を受けた作品は先に挙げた「スタンド」ですが、他にも沢山あります。
「刑務所のリタ・ヘイワース」「デッド・ゾーン」「スタンド・バイ・ミー」等々きりがありませんが。
でそれらの作品の底辺に流れる書き方というか作風。
それは主人公のみならず登場人物全てにおける詳細を極める書き込みに尽きると思っているのであります。
ストーリーの主題とは直接関わりがないとさえ思える部分にも時には膨大な文字数を使ってそのバックボーンを書き込むその執念深さというか回りクドさ。それこそがキング氏の作風であると思っているからであります。
だからこそ登場人物一人ひとりがリアルな存在となって読み手の心の中に生き生きと根付き、物語に深みを与え、結果作品の中の世界を疑似体験できることに繋がるのだと思います。

というのも「スタンド」の主要人物であるミュージシャンのラリー・アンダーウッド氏の実在感に僕は痛く心酔しているからでありますが(笑)、この「セル」ではそこまで登場人物に感情移入できなかったというのが正直な感想。
もちろん描写のリアルさはキング氏の真骨頂であり、その点については感服させられるばかりです。

あともう一点挙げると、前半は物凄いスピード感です。
読み始めた数頁でいきなりクライマックスかと言わんばかりの怒涛の展開となります。そしてそのまま行くわけです。
僕の期待する詳細且つ精緻を極めるじれったい程の書き込みはついに出て来ることなく最後まで走りきっていきます。


とはいえ全体を通してすっきり仕上がっているし、アリスのあのシーンには思わず泣きそうになってしまったり、主人公に父親として共感できる部分も非常に多かったし、物語としては素晴らしい作品です。

キング氏の作品は大方が映画化されていますが、中でもこれは相当な映画向きの作品だと思います。
写実的で詳細なる書き込みがないという一点において。

 

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