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2009年3月19日 (木)

深夜の闘争(1)

流した途端見る見るうちにヤバい水位まで達して来たのである。あれよあれよという間に。それはかつて体験したことが無いほど本当にヤバく、僕は溢れることを覚悟した。寸前のところで何とか持ち堪えてくれたが。
「かなりヤバいです」と僕は起きている家族の皆に告げ、そして扉に張り紙を張った。
『トイレつまり中。しようきんし』と。子供にも読めるように。
一階がダメだと分かったのでじゃあと二階に行ったお義母さんも僕と等しい体験をしたようで、同様な感想を洩らした。「確かにあれはヤバいね」と。


聞くとお義母さんには思い当たる節があるという。それは姪っ子のハルの仕業によるものだろうと。
なんでも一週間ほど前。2歳になるハルはトイレットペーパーを必要以上に潤沢に引っ張り出し、そしてそれを水に浸し、その上で何の躊躇もなく水を思い切り流す遊びをしていたという。無論トイレットペーパーを千切ることなく。結果どうなるか。水は流れる。紙は吸い込まれる。カラカラと(笑)面白いからまた流す。躊躇は、無い。
問題は、それを幾度繰り返したかはハル本人にしか分からないことなのだ。
確実に、それが詰まっているに違いないと皆が確信する。


こういう展開になってくると必要なものはアレだ。キュッポンキュッポンだ。正式名は家族の誰も知らない。それで通じるからだ。だがそれは家には無いという。
今はいい。だが問題は明日の朝だ。小さい子供も居る。
ましてや僕などは朝食のあとすぐにところてんの様なものですぐ来てしまうのである。その時点では一刻の猶予も無い。
小ならまだしも。大では壮絶且つ悲惨なことになるのは必至だからだ。


しかし時は既に25時近い。近くのホームセンターなどとうの昔に閉まっている。うーむちょっと遠くの深夜営業のスーパーに行けば置いてあるかも知れない。うん。俺ちょっとひとっ走り行ってくるわ。いってらっしゃ〜い気をつけてね。
深夜30分かけて川越のマックスバリュまで走る。件のキュッポンキュッポンも無事すぐ見つかりついでにビールとおつまみを買って帰る。キュッポンキュッポンとビールとおつまみが一緒の袋に入っている光景もなかなか微笑ましいものだ。
で帰ってくると何ともうみんな寝静まっている。俺寒い中ひとっ走りしてきたッちゅうのに。でもまあしゃんない。26時近いもの。
まいいや。まずはビール飲もう。キュッポンキュッポンが手に入ったからにはもうこれで大丈夫とビールには利尿作用がある事などはすっかり忘れている。で当然暫くするとトイレに行きたくなる。まあさっきお義母さんの時も何とか持ち堪えたみたいだし、きっと大丈夫だろう。でまあ結果大丈夫だった。


ふーん。それにしても問題は何一つ解決していない。
そろそろ闘わねば。


腕まくりをした僕は、足を踏ん張り、作業に掛かる。キュッ・ポン。キュッ・ポン。だ。リズムが大事なのだ。いいぞ。キュッ・ポン。キュッ・ポン。だ。
キュッ・ポン。キュッ・ポン。だ。
キュッ・ポン。キュッ・ポン。です。


かれこれ30分ほど僕はその一連の作業を繰り返し、遂にダメだと確信した。
この寒いのに汗だくだ。腰も悲鳴を上げている。
だってよく考えたらさあ、一階も二階もダメなんだからさあ、詰まってる所は便器じゃないんだよ。絶対それより先の下水管が合流した後の配管のとこなんだよ。たぶん外のマンホールを開けて見てみやんことには何ともならないんだよ。などと僕はブツブツ独り言を口走る。かなり疲れている。家族の皆は安らかに寝静まっている。


弱ったぞ。
朝はもうすぐそこまで来ている。

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