深夜の闘争(3)
「コレ、使おか」とやにわにお義父さんが取り出してきたアイテムは正に秘密兵器と呼ぶに相応しいものであった。
それは台所の配管内部を清掃するブラシ付きワイヤーである。
暗闇の中で一筋の光明が見えたような気がした。誰がどう考えてもこれで問題は解決することは疑いない。万歳三唱したい。
しかしその小一時間後、再び暗闇の中で絶望に打ちひしがれることになるとはこの時点での二人は知る由もない。
一戸建て住宅には通常、下水のマンホールは幾つかある。排水の系統別に。
ドボドボドボドボ溢れている問題のマンホールの下流側に位置するマンホールを開けてみる。すると予想に違わずカランカランに乾いている。
要するに、そういうことだ。
ドボドボマンホールをA地点、カランカランマンホールをB地点とすると、A地点とB地点の間に何らかの重大な問題が横たわっているわけだ。いや、ハッキリ言うとハルのトイレットペーパーが横たわっているわけだ。
遂に目に見えぬターゲットは見えた。いや初めから見えてはいたが。後はコレを排除するだけだ。
A地点とB地点間の直線距離は目測で約5m。
ブラシ付きワイヤーの長さは約3m。
ということはA地点とB地点の両側からワイヤーを差し込めば、必ず中間地点のどこかでオーバーラップすることになる。これでターゲットのその姿を間違いなく白日の下に曝すことができる。
お義父さんとアイコンタクトを交わす。
さあ、掛かろう。仕事に。
糞尿まみれの仕事に。
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