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2009年4月11日 (土)

深夜の闘争(4)

「アカンな。手応え無いわ」お義父さんが呟く。

お義父さんはずずずいとブラシ付きワイヤーを引き抜き、先端のブラシを目の前に掲げる。僕は懐中電灯のか弱い明かりでそれを照らし、二人で詳細に検分する。
もちろん、ブラシが揺れる度に雫が飛びます。辺り構わず飛びます。顔や服に。
確かにブラシには何か紙のような白い切れっ端的なものが付着はしている。しかしその量はターゲットには程遠く、またドボドボ水は一向にその水位を下げる気配すらない。


ダメみたいですね。
アカンなあ。
絶対貫通してますよね?
うん。しとる筈やなあ。ほやけど何で流れやんのやろな。
途中で紙がカチカチに詰まってるならなんか手応えあってもいい筈ですよね?
ほやな。でも全然手応え無いわ…。

ところで、最初の時点で二人の役割分担は明確になっていた。
つまりワイヤーでズボズボするのがお義父さん、で懐中電灯で照らすのが僕という寸法である。
どちらからともなくである。そういう役割分担となったのはあくまでも自然の流れでなのであり、その流れには誰も逆らえないのであります。


さて、これで万策尽きたわけである。


予定では今頃正体を現している筈のターゲットは影も形もなく、ドボドボ溢れる水は依然としてそこに存在し、結果的に問題はなに一つ解決の見通しすら立たない状況に再び立ち戻ってしまったわけである。
そして残されたのは糞尿に塗れた男二人だけなのであります。


緊張の糸が切れたのか、お父さんは何故か急に便意を催したようだった。
考えてみれば無理もない。すやすやと安眠していたところを僕に叩き起こされ寝巻のままで小一時間寒風吹きすさぶ夜中に汗ばむ程ズボズボした結果これである。僕は大変申し訳ない気持ちで一杯になってしまった。

大ちゃん、アカンわ。大便しとぅなってきた。
お義父さん、ダメです。使えませんよ。
ほやな。でも行きたいわ。
あ、そうです。コンビニあります。
そうか。貸してくれるやろか。
大丈夫ですよ。


でお義父さんは行きました。一刻を争う一大事ですから。そのままの姿で。
僕は待ちました。一服点けながら。

ふと車のフロントガラスに目をやると、凍結してました。
まさかそこまで冷え込んでいたものとは気付かず、二人はベストを尽くしていたわけです。いや、ベストを尽くしていたのはお義父さんですが。


頭をガンと殴られたように急に睡魔が襲って来る。
お父さんはコンビニに用を足しに行ったまま帰って来ない。

朝は、マジですぐそこです。

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