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2009年4月

2009年4月30日 (木)

深夜の闘争(5)

この闘争にもそろそろ終止符を打たねばなるまい。
あっちの空が少し白んできている。
お義父さんも大便から帰ってきた。


最終手段だ。
冷蔵庫にマグネットで貼り付けてある専門業者に電話をするのだ。万策尽きた二人に残された唯一の切り札はもうそれしか残されていないからだ。何時間か前にさっさと決断しておけば良かったという考えが脳裏をよぎったが振り払った。俺達は素人なりに少なくともベストを尽くしたのだ。ねえお義父さん。白旗を揚げるのはなんとも不本意なことではあるが致し方ない。

あてつけがましいほど眠そうな声の先方さんに今までの一連の事情を説明し、じゃあ取り敢えず依頼しますと言う話にはなったものの先方曰く来れるのは早くて9時過ぎになるとのことだった。
いや実は9時ではダメなんだけども。事情が事情なので仕方ない。他の業者を探す気力も既に今の時点では欠片も残ってはいない。しょうがないけどお願いしますわ。
みんな、すまぬ。明日の朝は全員コンビニ排便確定だ。


結局、業者が来たのは10時近くだった。それがちょっと頼りなさそうな若い兄ちゃんで如何なもんかと思ったがまあそこはプロなんだからと無理矢理納得。
言っちゃ何ですが結構忙しいものなんですね。そんなに混んでたんでしょうか。他のお客さんで。よもやシンクロニシティであらゆる家庭でこういう現象が多発していたとでも。
まいいや。


この業者は作業に掛かる前に見積もりを提示するという触れ込みだったから割かし良心的なのかなという感じでお願いすることになったのだが、その見積り額は思いの外高かった。マジで高かった。ビックリするくらい高かった。
あなたホントにビックリしますよ?気をつけたほうがいいですよお客さん。軽はずみな考えでこういう業者をアンタ滅多に呼ぶものじゃないですよ。マジで。片手に近かったんですから。片手すよ片手。
内心、人の弱みに付け込みやがってこのクソガキ、という気持ちもよぎったものの(今はクソオヤジはこっちの方なのだ)こうして馳せ参じてくれたわけだし今更追い返すのも忍びない。遅刻されたのはかなりの減点だけど。
こういうの何て言うんでしょう、弱り目に祟り目という心境になってしまっているわけですよ。こういう場合。要は背に腹は換えられない状況を巧みに利用する業界なわけですね。こちらさん方は。切羽詰って連絡するわけですから。
で渋々涙を飲んで了承。高くついたなと。後悔してももう遅い。

まあいずれにしてもお願いすることになったのだから早速現場で我ら素人二人の奮闘を掻い摘んで説明する。
こちらの話もそこそこに。まあとにかく洗浄してみましょう。この高圧水で。兄さん自信満々である。そりゃそうだ。プロなのだから。
じゃやってもらいましょう。思い切り。やっちゃってください。


コンビニから帰ってきた子供達も興味津々作業を見つめている。
作業開始の約10分後、途方に暮れた表情をするのは今度は業者のお兄さんの方であった。


でしょ?
だから最初からそうなんだって。それで解決するならとっくの昔に解決してるんだって。素人とはいえ大人二人で必死に取り組んだ結果ってのは断じて捨てたものじゃないんだって。
見積もり通り満額払うからさ、早くやっつけちゃってくださいな。さあ。
さあ。

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2009年4月29日 (水)

LIVE PERFOMANCE

今日4月29日昭和の日は娘らの晴れ舞台の日だ。
約一年前から通い始めたバレエ教室の年に一度の発表会の日だ。
家族のみならず一族総出で応援体制を敷いて(笑)当日に臨んだ。

なにしろ人前で演技する初めての機会となる日だ。彼女らの人生で。
だから今日という日は、特別な日なのだ。


このバレエ教室。服部バレエ研究所さんである。
こちらは指導方針が徹底している。稽古場に保護者は一切立ち入れないのだ。シャットアウト。それは子供達の甘えを断ち切るためだという。
親としては一度くらい練習風景を覗かせて貰いたい気持ちもあったのだが、許されない。
だから今回が、初めて目にする彼女らのLIVE PERFOMANCEなのである。


さて今日。
桑名市は大山田コミュニティプラザで開催された「小さなバレエコンサート」である。
バレエ教室に通う子を持つ家庭にとって、こういう一大イベントとなると出演する本人のみならず家族(いや、奥さんだ)もそれはそれは大変な一日になる。
出演する生徒さんのお母さん達何組かが、うちの奥さんの実家に集結し、お化粧から髪の毛のセットから付け睫毛からそりゃもう朝からてんてこ舞いの奥さん方の姿を横目にこういう場合父親はオブザーバーにならざるを得ない。というか手の出しようもない。精々準備が出来上がった後に写真を何枚かパチリパチリと取るのみくらいしか。


ブザーが鳴る。緞帳が上がる直前の一瞬。
その時緞帳の向こう側にいる側の気持ちというものは経験したものにしか決して解り得ないものがある。
逆に観る側としては実に気楽なものだ。緞帳の向こう側の気持ちに思いを馳せる必要などない。
ま、それでいいのだけれど。それこそが送り手と受け手の違いなのだから。だから例えそれがどんなささやかな会だったとしても、LIVEで人前に立つということは、そういうものなのだ。
その小さい胸にどれ程の緊張と興奮を詰め込んで、娘らはその時を待っているのだろう。
胸が苦しくなるような思いで、僕はその瞬間を待っていた。


自分なりに精一杯の演技を見せてくれた娘たちを、僕は心から誇らしいと思っている。
生涯、この日の経験を忘れず、これからもバレエに限らず色んな舞台で、自分らしい素敵なLIVE PERFOMANCEを披露してくれるように成長して欲しいと僕は、願っている。

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2009年4月28日 (火)

ロードショー

早いものでこの4月から我が家のプリティツインズは幼稚園に通いだした。
本当に、早いものだ。ついこの前オムツを替えていたような気もするのだが。
以前ここに書いたとおり、これは我が家の教育方針でもあるのだが、子供達は就学前の一年だけの登園となる。
その意味では本当に妻が頑張ってくれた。子供を持つ家庭ではそれがどういう意味を持つのか察して下さるだろう。

ま、それで毎日規則正しいリズムで生活しようとしているわけだがこれまた切り替えが大変である。何しろいままで彼女らは平気で8時過ぎまで爆睡していたものをある日突然6時半に叩き起こされるようになったのだから。
ここ最近ようやく慣れてきたようではあるが、それでも土日を挟むと月曜は流石にきつそうな素振りを見せる。健気に起きてくれてはいるが。
園に通いだして3週間ほど経つが、既に今の時点で土日が恋しくなっているようだ(笑)
パパ、あしたやすみ?さいじつ? としきりに訊いてくる(笑)


このくらいの年頃の子供は、非常に好奇心旺盛である。何でも質問してくる。質問責めだ。
その質問内容は実に多岐に亘り、どこからどういう方向で飛び出してくるかまるで見当もつかない。フェイントなど一切なく常に直球だ。瞬間瞬間に脳裏をよぎったことを混じり気なしにぶつけてくる。だから受け取る側も真剣勝負で臨まねばならない。
そういう時、きちんと答えを返してあげると、子供は素直に喜ぶ。逆にこっちの歯切れが悪くなったりするとそういう時は非常に敏感で、それ以上追求はしないでくれている(笑)情けない話であるが。
まあ、良いのだ。わからないことは正直に分からないということも大事なのだから。
ゴメンね。パパも勉強しとく。こんな感じで僕としてはふざけた回答だけは絶対にしないようにしている。


で先日、こんな質問があった。
テレビを観ている時のことである。


「パパ、ロードショーってなに?」

僕は一瞬、言葉に詰まってしまった。言われてみるとロードショーって何だろう?そもそも。考えたこともなかった。

「ロードショーってね、映画のことだよ。映画館で映画をやることだな」
まあこんなところが模範解答と呼べる範囲だろう。ちょっと苦しいが。

「えいが?えいがをみるのをロードショーっていうの?」
「まあそうだな。映画館でね」
「えいがかんでえいがをみるのをロードショーっていうの?ふーん。じゃあ金曜ロードショーは?」
これは軽いジャブである。

「金曜ロードショーはテレビだよ?」
「…それはあのアレだ。金曜ロードショーはテレビで観る映画やろ?金曜日に映画がテレビでやるからな。だから金曜ロードショーだな」
「ふーん。じゃあ、じゃあ」

あの、すみません。もう勘弁してください。


「じゃあ、こうせいロードショーは?」
「…?」
「こうせいロードショーってなに?」
「…??」


こうせいロードショーって何?
それどこで聞いたんですか?いま?テレビ?
こうせいロードショーって、何ですか??


その時テレビに映っていたのは豚インフルエンザに関する政府の対応で記者会見に臨む舛添要一厚生労働大臣その人であった。

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2009年4月11日 (土)

深夜の闘争(4)

「アカンな。手応え無いわ」お義父さんが呟く。

お義父さんはずずずいとブラシ付きワイヤーを引き抜き、先端のブラシを目の前に掲げる。僕は懐中電灯のか弱い明かりでそれを照らし、二人で詳細に検分する。
もちろん、ブラシが揺れる度に雫が飛びます。辺り構わず飛びます。顔や服に。
確かにブラシには何か紙のような白い切れっ端的なものが付着はしている。しかしその量はターゲットには程遠く、またドボドボ水は一向にその水位を下げる気配すらない。


ダメみたいですね。
アカンなあ。
絶対貫通してますよね?
うん。しとる筈やなあ。ほやけど何で流れやんのやろな。
途中で紙がカチカチに詰まってるならなんか手応えあってもいい筈ですよね?
ほやな。でも全然手応え無いわ…。

ところで、最初の時点で二人の役割分担は明確になっていた。
つまりワイヤーでズボズボするのがお義父さん、で懐中電灯で照らすのが僕という寸法である。
どちらからともなくである。そういう役割分担となったのはあくまでも自然の流れでなのであり、その流れには誰も逆らえないのであります。


さて、これで万策尽きたわけである。


予定では今頃正体を現している筈のターゲットは影も形もなく、ドボドボ溢れる水は依然としてそこに存在し、結果的に問題はなに一つ解決の見通しすら立たない状況に再び立ち戻ってしまったわけである。
そして残されたのは糞尿に塗れた男二人だけなのであります。


緊張の糸が切れたのか、お父さんは何故か急に便意を催したようだった。
考えてみれば無理もない。すやすやと安眠していたところを僕に叩き起こされ寝巻のままで小一時間寒風吹きすさぶ夜中に汗ばむ程ズボズボした結果これである。僕は大変申し訳ない気持ちで一杯になってしまった。

大ちゃん、アカンわ。大便しとぅなってきた。
お義父さん、ダメです。使えませんよ。
ほやな。でも行きたいわ。
あ、そうです。コンビニあります。
そうか。貸してくれるやろか。
大丈夫ですよ。


でお義父さんは行きました。一刻を争う一大事ですから。そのままの姿で。
僕は待ちました。一服点けながら。

ふと車のフロントガラスに目をやると、凍結してました。
まさかそこまで冷え込んでいたものとは気付かず、二人はベストを尽くしていたわけです。いや、ベストを尽くしていたのはお義父さんですが。


頭をガンと殴られたように急に睡魔が襲って来る。
お父さんはコンビニに用を足しに行ったまま帰って来ない。

朝は、マジですぐそこです。

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