日常的一コマ面

2009年3月19日 (木)

深夜の闘争(1)

流した途端見る見るうちにヤバい水位まで達して来たのである。あれよあれよという間に。それはかつて体験したことが無いほど本当にヤバく、僕は溢れることを覚悟した。寸前のところで何とか持ち堪えてくれたが。
「かなりヤバいです」と僕は起きている家族の皆に告げ、そして扉に張り紙を張った。
『トイレつまり中。しようきんし』と。子供にも読めるように。
一階がダメだと分かったのでじゃあと二階に行ったお義母さんも僕と等しい体験をしたようで、同様な感想を洩らした。「確かにあれはヤバいね」と。


聞くとお義母さんには思い当たる節があるという。それは姪っ子のハルの仕業によるものだろうと。
なんでも一週間ほど前。2歳になるハルはトイレットペーパーを必要以上に潤沢に引っ張り出し、そしてそれを水に浸し、その上で何の躊躇もなく水を思い切り流す遊びをしていたという。無論トイレットペーパーを千切ることなく。結果どうなるか。水は流れる。紙は吸い込まれる。カラカラと(笑)面白いからまた流す。躊躇は、無い。
問題は、それを幾度繰り返したかはハル本人にしか分からないことなのだ。
確実に、それが詰まっているに違いないと皆が確信する。


こういう展開になってくると必要なものはアレだ。キュッポンキュッポンだ。正式名は家族の誰も知らない。それで通じるからだ。だがそれは家には無いという。
今はいい。だが問題は明日の朝だ。小さい子供も居る。
ましてや僕などは朝食のあとすぐにところてんの様なものですぐ来てしまうのである。その時点では一刻の猶予も無い。
小ならまだしも。大では壮絶且つ悲惨なことになるのは必至だからだ。


しかし時は既に25時近い。近くのホームセンターなどとうの昔に閉まっている。うーむちょっと遠くの深夜営業のスーパーに行けば置いてあるかも知れない。うん。俺ちょっとひとっ走り行ってくるわ。いってらっしゃ〜い気をつけてね。
深夜30分かけて川越のマックスバリュまで走る。件のキュッポンキュッポンも無事すぐ見つかりついでにビールとおつまみを買って帰る。キュッポンキュッポンとビールとおつまみが一緒の袋に入っている光景もなかなか微笑ましいものだ。
で帰ってくると何ともうみんな寝静まっている。俺寒い中ひとっ走りしてきたッちゅうのに。でもまあしゃんない。26時近いもの。
まいいや。まずはビール飲もう。キュッポンキュッポンが手に入ったからにはもうこれで大丈夫とビールには利尿作用がある事などはすっかり忘れている。で当然暫くするとトイレに行きたくなる。まあさっきお義母さんの時も何とか持ち堪えたみたいだし、きっと大丈夫だろう。でまあ結果大丈夫だった。


ふーん。それにしても問題は何一つ解決していない。
そろそろ闘わねば。


腕まくりをした僕は、足を踏ん張り、作業に掛かる。キュッ・ポン。キュッ・ポン。だ。リズムが大事なのだ。いいぞ。キュッ・ポン。キュッ・ポン。だ。
キュッ・ポン。キュッ・ポン。だ。
キュッ・ポン。キュッ・ポン。です。


かれこれ30分ほど僕はその一連の作業を繰り返し、遂にダメだと確信した。
この寒いのに汗だくだ。腰も悲鳴を上げている。
だってよく考えたらさあ、一階も二階もダメなんだからさあ、詰まってる所は便器じゃないんだよ。絶対それより先の下水管が合流した後の配管のとこなんだよ。たぶん外のマンホールを開けて見てみやんことには何ともならないんだよ。などと僕はブツブツ独り言を口走る。かなり疲れている。家族の皆は安らかに寝静まっている。


弱ったぞ。
朝はもうすぐそこまで来ている。

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2009年2月26日 (木)

風の歌を聴け

この季節は手洗いうがい励行が我が家の必須事項なのである。ま何処の家庭でも同じだとは思いますが。

ところで我が家ではここのところ給湯器がヤバくなってきており、湯温が程よく温まるまで結構時間がかかってしまうのである。
仕方ないからジャージャー湯水のごとく水を流し適温の湯になるまで待つのであるが、これが非常にもったいない。根が貧乏性なので温まる前に手を洗い出してしまう。なので温まった頃には完了しておるという寸歩である。んなこたどうでもいい。


で重要なのは手洗いうがい励行である。

先日、夕暮れ時にチビと一緒に帰宅してそしてお決まりのように手を洗おうとした。
その時は結構お腹が空いていたので「さ、さ、早く手を洗ってご飯食べようね」と言いながら僕は娘の介助をしてあげた。つまり背中から手を回し、袖を捲くってあげ、まだ水が冷たかったので嫌がる子供の手に石鹸をつけて一緒に洗おうとしてあげたわけである。


その時。
「グゥ…グォー…」というような音が聴こえた。幽かに。

手洗いの手を止め、チビは耳を澄まして遠くを見るような目でこう呟いた。
「パパ…風の音がするね…」

その時、外では雨混じりの風が結構吹いていたのだ。
春の嵐だ。


こんな風に時として大人びた仕草や言葉遣いをする我が娘。
こうして一つ一つ大人の階段を上っていくのだなあ。


なので実はその音が、本当は僕のお腹から出た空腹音だとはそんな目をしている娘には、僕は言えなかった。

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2009年2月24日 (火)

スーパーで熟読

どうやら僕には生鮮品等の買い物をするセンスというものが欠落しているようなので家族でスーパーに買い物に行くような際は専ら子守に専念することになる。
空のカートに子供を乗せ最初は奥さんの後を付いて回るのだがそうこうするうちにはぐれてしまい、店内をグルグルとさ迷うことになる。当てもなく。

基本的に僕は文房具が大好きなのでこういう場合はそのコーナーにも当然のように立ち寄ることになる。特に何を買うでもないのであるが。財布を持参していないのでね。
そんな時に新機能の文房具が並んでいたりすると非常に幸せな気分になったりする。まあ文房具は今日の話題にはなんら関係はないのでどうでもよいが。


で店内を巡るのにも飽きると落ち着く先は書籍のコーナーとなる。
然るに主婦層が顧客の多くを占めているスーパーだけに陳列されているものはやはり主婦向けのものが圧倒的に多い。ファッション関係の雑誌やら住まいや料理に関わるもの等々である。
次に多いものが子供向けのものだ。「たのしい幼稚園」とか「おひさま」とか。プリキュアとか仮面ライダーとか。
うちのチビ達も例に洩れずこの辺がモロにストライクゾーンど真ん中なようで、このコーナーに立ち寄るや否やちび達はカートに乗り込んだままで思い思いの書籍を手に取り熟読態勢に入る。非常に微笑ましいものだ。
で後はお父さん向けのものが少量並んでいる。パソコン雑誌やら車雑誌やら文芸雑誌やら。余談だがこの文芸雑誌は表紙になぜか艶かしい画が付いているものがやたら多い。僕の名誉にかけて記しておくが僕はそれに手を伸ばす域にはまだ達していないので手にすることはない。手にしたいかどうかは別問題として。

とまあざっとこんな感じなので僕としては何より好きな書籍を目の前にしているにもかかわらず僕の読むべき書籍はそこには見付からないのである。残念ながら。
ま早い話がそこには僕の欲するPlayerやGuitarMagazineという音楽系の雑誌など皆無なのだ。残念ながら。置いてあることを期待するだけ虚しくなってくるのだす。


だから仕方ないので僕は適当に目に付いたものを手にとってパラパラとやるわけであるが、その日は非常に興味をそそる雑誌が置いてあったのでそれを読み耽ってしまった。

Logomu2
ムーだ(笑)


決して僕はオカルト的なものに興味津々な訳ではないが、この手の書籍には子供の頃から弱いのである。中でも特に矢追純一的なものには。
好きか嫌いかと訊かれれば、大好きなのである(笑)
矢追純一のUFOスペシャル。あのジングル。テテテーテテテテテー。最高です。いまだにあれを超える特番はありませんねえ。少なくとも僕の中では。


スーパーの片隅で書籍を一心に読み耽る親子の図。
本好き親子を自認している我が家にとってある意味これも価値的な時間の過ごし方なのである。
例えそれが「たの幼」と「ムー」であったとしても。

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2009年2月16日 (月)

エアーチョコ

今朝オフィスに出社すると社の女の子がニコニコしながら寄ってきたので「なに?チョコ?」と聞くと「え?あ、いやあの、じゃこれ」といって僕にそれを手渡した。
「これは本命ですか?」と僕が率直に尋ねると彼女は「ええ、私は妻子ある人にしか本命は渡しませんから」と言うので「わかりました。しかと受け取ります」と僕は答えた。


嗚呼エアーチョコ。

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2008年9月15日 (月)

温泉気分

先日、銭湯に行ってきた。

銭湯とは言え、バカに出来ないのである。最近の銭湯は。
ここは良い。すこぶる良かった。


まず、奥さんと祖母ちゃんとチビたちがハマった。
とにかく良いからいっぺん一緒に行こうと奥さんに誘われて連れて行かれて僕もハマった(笑)

うん。これは、ハマる。
まず間違いなく一度行ったら殆どの人がリピーターになりますね。確実に。


つい最近7月にリニューアルしたばかりとのことで、館内はとても綺麗で快適。
入館して着替えたらあとは手ぶらでOK。持ち物といえば煙草くらいであとは何にも要らない。ホントに身軽。これだけでも特筆もの。
浴衣っちゅうか作務衣っちゅうか、そういったスッカスカの衣装を身に纏うだけで男性は特にあちこち色んな所がブラブラと開放的になれるのに、その上手ぶらですぜ。
食事とか飲み物とか、別料金が掛かるものの会計は全て腕にはめたリングのバーコードで処理。で最後に一括精算。
余りの便利さについ財布の紐が緩むのだけを注意してればあとは快適至極という寸法だ。

総合施設なので、およそ銭湯に考えられるありとあらゆる設備が整っており、建物施設全体に配慮が行き届き、コンセプトに基づいた設計と気配りが館内のあちこちに盛りこまれているのが良く感じられる。
なんと、温泉につきものの卓球まである(笑)
あとマン喫があるのも面白い。将棋室はよく意味が分からないが(笑)


夕方から行って夜に帰ってきましたが、これはあれです。朝から晩まで丸一日居れますわ。
もちろん、お風呂も各種揃っていて楽しめます。ですがそこら辺のスーパー銭湯とは一味違います。檜風呂なんてもう、もの凄くいい匂いがして極上でしたよ。
風呂上りの空腹で食べるご飯も美味しかったし。食後にオープンカフェでコーヒーやカクテルも飲めるし。
眠くなったら24時間いつでも仮眠室で眠れるし。テレビもあるし映画もあるし。
天然温泉の湯ではないという点を除けば、おそらく最上級のリラクゼーション・スパと言えるでしょう。


名古屋に居るのにまるで遠くの温泉に旅行に行っているかのような気分を味わわせてくれました。

ということで、良かったのであります。名古屋市南区の湯〜とぴあ宝
24時間営業で年中無休。
とにかく最高です。オススメです。

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2008年8月 4日 (月)

リアルまる子

こないだの土曜日お隣の町東員町にちびまる子ちゃんの一行がやってきた。
で観に行ってきた。

劇団飛行船の方々によるマスクプレイミュージカルだ。
僕の唯一の気がかりはまる子の声がTARAKOさんかどうかのただ一点であったが、それは見事にクリアされていた。
要するに録音・編集された音声にライブで完全に動きを合わせるという神業集団によるミュージカルだったわけである。
アドリブ、厳禁である。


僕達家族の席は会場最後列から3列目くらいであった。これがなかなかよかった。ステージ全体が見渡せたし。
でステージが始まる前に、お姉さんの声で場内アナウンスが流れたのだが(これは録音でなく生)、場の雰囲気に推され思わず僕も一緒になって大声を出してしまった。
「さあみんなでこれからまるちゃんを呼びましょうね〜!1、2、3、まーるちゃーん!」
「まーるちゃーん!」
てな具合でタイミングバッチリでピーヒャラピーヒャラとテーマソングが流れそして緞帳の前にまるちゃんが「こんにちはー!」と元気一杯飛び出してきた。
途端に前列5列目くらいまでの子供達が一瞬硬直したように見えた。

まるちゃんがリアルだったのだ。
そしてこれは充分に予想できた筈だが、思いのほか大きかったのだ。身体が。
そして頭蓋が。
肩幅、一杯である。

まあステージが始まってしばらくするとその頭蓋サイズにも慣れ、物語にすんなり入り込む事が出来た。
まるちゃんとたまちゃんの間の信頼とクラスのみんなの友情と家族の愛情が一杯詰まった良いストーリーだった。


生の舞台はやっぱりいい。
舞台終盤、フィナーレの時に客席にまるちゃんとたまちゃんを除く全員が下りてきて、子供達みんなに握手のサービスなんかしてくれるわけである。
そして最後列あたりの僕の家族の席にも、来てくれた。


友蔵が。


頭蓋が異様にでかく、そして頭蓋の尖った友蔵が。
ステージ上で他の誰よりも一番いい動きをしていた友蔵が。

リアル友蔵が。


上のチビはかなりビビリつつも握手に応じ、そして下のチビは椅子から転げ落ちんばかりに逃げた。友蔵から。
そんな彼女らの談話である。

上のチビ談「友蔵、手が冷たかったね」
下のチビ談「友蔵、ワニより怖かったね」

事実、至近距離で見る友蔵は、ある意味凄まじかった。巨大頭蓋の頭頂部までの身長はゆうに190cmを超えていた。
ちなみに妻は、花輪君に来て欲しかったようである。


そしてホールの建物を出て駐車場に向かう時に、ホール裏の搬入扉辺りに汗みどろになって煙草を吸っているおじさん達がいた。
僕は心の中で「お疲れ!」と言った。
きっと彼らこそ、数分前まで友蔵やヒロシや丸尾君や花輪君だった人たちに違いないからだ。
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2008年7月28日 (月)

至福の時

背中がカユイのである。


で、掻く。
ふと指を見ると何やら付着している。

皮だ。
どうやらその段階に達したようだ。


で頼む。剥いてくれまいかと。娘らに。
最初は激しく拒絶される。まるで汚いものに触るかのようだ。確かにその通りだ。そんなおぞましいもの僕でも出来れば見たくない。鳥肌が立ってくる。
でも僕が採取した綺麗なサンプルを見せてあげると一転、そのサンプルに俄然興味を示し掌を返したように取り組み始めてくれた。

こういうものは一度軌道に乗るとうまいこと進んでくれるようである。
今日などうつ伏せに午睡していると勝手に僕のシャツをたくし上げ、作業に掛かってくれていた。
大きいのが獲れた、などとはしゃいでくれている。

まどろみながら軽くチクっとしながらも娘らがピリピリと剥いてくれるこの瞬間とは、まさしく父親冥利に尽きる至福の時といえまいかと考える僕は変態なのだろうか。


でも5分もすると飽きるようである。
で後は自分でピリピリとやるのである。

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2008年7月22日 (火)

確定

これからこれが毎年恒例の行事となることが確定した。


一度体験させてあげたかったのだ。
本物の海を。


我が娘カノとリノそして同い歳の従姉妹ワカサ。この三人が揃うと最強だ。読んで字の如くまさしく姦し娘。ところでこの「姦しい」語源的には正しくは「囂しい」が正解らしいがんなこたどうでも良い。

でカノリノワカサ。小悪魔三人衆。
彼女らを黙らせるには大人が激昂する以外にない。思い切り感情を露にした時点でようやくあ、この人は怒っているのだと理解されるようである。全く何時まで続くのかこの果てしなき闘争は。まいいや。


で海。

行ってきました。
三重県は津市。御殿場海岸へ。
偶々入った海の家は「みよし」。まあ「みよし」が一杯だったから店のオバチャン公認で隣の「みはま」へ回されましたが。

大人にとって海の最大の楽しみは七輪で食べる貝だ。少なくとも貝好きの僕にとってはこれ以外の楽しみは何もない。
パカッと口を開けたところにちゅーっと醤油を注ぎプルプルの身をハフハフいいながら頬張るこの至福さよ。
堪りません。どれだけでもイケます。


で海。

行ってきました。
子連れで。じいちゃんばあちゃんを巻き込んで。
4歳の子供三人連れて行くわけですからとなると最低でも大人が三人要るわけです。
同時に浮き輪つけて三人の子供が海に入るわけです。子供は自由人ですから勝手気ままに動くのです。僕は当然ながら三つ目なわけではありませんので同時に三人の行方を追うことは物理的に不可能です。二人が限度。
遠浅で溺れることは無いにしてもそれでも視界から消えることは危ない。だが大人で水着を持って来ているのは僕だけ。じいちゃんはラフな上下。この時点でじいちゃん海入り決定。


で半日近く遊んで帰ってきましたが、当初の目的であったチビ達に広大な海を体験させてあげるというこのミッションは完遂。
同時に強烈な日焼け体験も完遂。もちろん子供達には日焼け止めを完全に施しましたがそれ以上に真夏の太陽は強烈でありました。チビらは背中にワンピースの水着の跡クッキリです。大体海に入ると日焼け止めも流れちゃうしね。
じいちゃんと僕は上半身火傷に近い状態です。むーんTシャツ着ておくべきだったか。後悔先に立たず。
余談ですが背中が焼けると車に乗るのがきついです。特にシートが焼けた状態の車は。ちょっと快感ではありますけれど。
今は上半身全体が超痛痒いです。


で海。

ということでこれからこれが毎年恒例の行事となることが確定したのであります。

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2008年7月10日 (木)

言いまつがい

僕の家の前にお住まいのオヤジさんは、綺麗好きだ。
結構な、綺麗好きだ。


オヤジさんは毎週、休みの日になると道路を箒で掃いている。ついでに我が家の前の側溝まで綺麗にしてくれる。
有り難いやら申し訳ないやら、である。

チビと一緒に朝の公園に遊びに行こうと玄関を出るとオヤジさんが道路を掃いている。ラクダのシャツにステテコといういでたちである。
「おはようございます。朝から暑いですねえ」と僕は声をかける。
「オハヨーございます」とチビたちも声をかける。
「あーおはようございます。こうも暑いと参るねえ」オヤジさんはチビにも負けず元気一杯である。


で「あー暑い暑い」とか言いながらオヤジさんはせっせせっせと道路を掃く。

で「こうも暑いとアレだね。ネズミが一杯出て困るね」とオヤジさんは言う。


「…ネズミ?!」と僕に代わって率直に返事をするのはチビたちである。
正直、僕は余りの脈絡のなさに唖然として返す言葉が無かったのだ。何だって?ネズミ?ですと??

「そう!ネズミネズミ。こうも一杯ウジャウジャ出てこられると掃除がおっつかんわね」とオヤジさんは元気一杯である。
「ネズミがいるの?!」とチビたちはやにわに興奮気味となる。


ところで一体どこにネズミが居るのだ。掃除がおっつかないほど大量発生しているネズミが。
どこぞに。
おるのか。
一体。

恐いではないか。


「あーネズミ。…違う。ミミズだ。ミミズ」


ん。

納得。

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2008年6月25日 (水)

初夏の夜の夢

今夜、やっと約束を果たせた。娘らとの。
いや、約束とはいえそれ以上に自分が楽しみにしていたのかも知れない。


「今日、行くぞ」 と仕事帰りに妻に連絡を入れる。
「ン。わかった。途中まで車で迎えに行く」 と妻は応えてくれる。
その後いつもの如く電話が回される。
「行くの?!ヤッタ!」「早く帰ってきなさい」 と次々に受話器から娘らの嬌声が聞こえる。

実は数日前に一度トライしていたのである。ところがその日は見事な失敗に終わった。
何故なら雨が降っていたからだ。根本的に間違っている。
しかも出発する直前にネットでチョチョッと適当に調べ、大体の当たりをつけて無計画に向かうという若干突っ走った感もあった。
今日はそのリベンジともいえる夜となる。会社の先輩から有力な情報も仕入れた。今日を逃せば明日はない。


桑名市内から片道小一時間。
車中で夕食代わりのお弁当を食べながら約束の地へ。
目指すは三重県藤原町のいなべ市立立田小学校

ところで本当にこんな所に小学校あるのか?周り真っ暗だし何もない。
ナビを頼りに程なくして現場に到着する。時刻は20時半。
駐車場が結構埋まっている。ナンバープレートを見ると「名古屋」とか書いてある。うーん?うちと一緒な訳か?

幾人かとすれ違う。すれ違いざま「一杯見れたね」とか聞こえる。期待が高まる。
だがそれ以外人の気配が全くない。さっきの駐車場の車の持ち主達は何処に?
校舎の裏の方からボソボソと声が聞こえる。子供の手を引き近づいてみることにする。
しかしとにかく真っ暗だ。外灯というものがない。足元がちょっと危ない。
話し声の主は小学生の少年だった。真っ暗闇の中先生と話していたようだ。小学生?この時間に?
声をかけてみる。「どこで見れますか?」
彼はしっかりした口調で答えてくれた。「あっちの林のほうに人工川があります。体育館の裏手です。そこへ行けば見れます」
「ありがとう」 とお辞儀をして家族四人でそこへ向かう。ついに、ここまで来た。


「どこだろう?こっちかな?」 と娘達と話していた時に何か光るものが視界の隅を横切った。
錯覚かと思いきやそうではなかった。暗闇に目を凝らしてみる。
その幻想的な光景に、その美しい舞に、僕はただただ立ち尽くしてしまった。
娘達はその光に負けないくらい、目を輝かせている。

大体が前に見たのは今からもう25年前、高校一年生の時のことだ。
当時の記憶なんていい加減なものだからその時どんな風に見えたかどんな舞い方をしていたのか完全に忘れてしまっている。


それにしてもこの世にはこんなにも美しいものがあるんだ。
本当に、夢のような光景だった。
この美しさを言葉にすることは出来ない。心に焼き付けるしかない。


ほんの少しでもいい。
今日この日に体験した何かが残って欲しいと願うばかりである。娘達の心の中に。

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2008年5月 6日 (火)

パンツ兄弟

三連休以上の休暇があると我が家は、帰省する。
その確率、100%である。
ただし帰省とは言っても車で15分の奥さんの実家である(笑)


帰省すると当然寝食を共にする。じいちゃんばあちゃんと。
オートマティカリーに朝起きてから寝るまで24時間行動を共にするのも珍しくはない。
奥さんの実家というものは誠に居心地の良いもので、マスオさんの気持ちが実によくわかる瞬間なのである。

風呂もオートマティカリーに共有する。
今回のGWの連休は初日からマスオさんしていたために困ったことに着替えが底をついた。
いや、着替えというか下着が。


お風呂に入る時の必需品はPSKだ。
PSKとは言うまでもなくパンツシャツ靴下の略である。
ちびっ子達とお風呂を共にする場合一刻の猶予もないので「オーイPSKないぞー」などとほざきお風呂インする。


「パンツ無いわ」と奥さん。
「じゃあいいわ。リサイクルするわ」と僕。
「おーワシのパンツあるぞ」とじいちゃん。


嗚呼パンツ共有パンツ兄弟。

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2008年5月 3日 (土)

DIY

10年も住むと色々出てくるのである。
我が家でも例外ではない。
先日トイレが壊れた。


まずタンク内からの少量の水漏れ音が。チョボチョボと。どうやらボールタップのバルブ部の締りが悪くなっているようだ。
タンク内を検証。予想に違わずチョロチョロと漏れている。パッキンか。
で近所のカインズにてパーツを購入。ボールタップ部のパッキン単品は売っていない。よってボールタップそのものを交換しようということになる。
で無事交換完了。バルブ部の水漏れは無いようだ。
で試運転。

すると今度は便器内にジョボジョボと水漏れが発生。止まらない。うーむ。
もう一度タンク内を検証。よく診るとオーバーフローの立て管の根元にヒビが入ってそこから漏れているようだ。
ボールタップ交換の際にちょっと触ってしまってイってしまったようだ。君はそんなにモロイのか。ていうかただ単に老朽化していただけなのかもね。
コーキングで騙すか。時間の問題かもしれないが。でグイグイやってたらあっけなく根元からポキリと。ヂエンドに。

Toilet
でまたカインズへ。手ぶらで行ってしまった為(念のため携帯で内部の写真を撮ってはおいたが)受け付けのおじさんとカタログをひっくり返してスッタモンダしてなんとか我が家のタンクに該当する型番を確定。結果取り寄せ。

で一週間後当該品到着。
で深夜にタンクを丸ごと外し交換作業。なるほどこういう構造になっているのか。面白いものだなあ。
水周りだから排水部のねじ込みもガッチリ行なわれている。
で深夜にガンガンゴンゴンと騒音を発生させ当該既存パーツを取り外し新品に交換。
タンクを再設置する時は流石に妻に手伝って貰ったが。
で試運転。
…うむ。バッチリだ。


ということで久々にDo It Yourself。しかし手馴れてきた頃にはもう終わっているという(笑)
でもこのパーツ交換ならもうお手の物。誰か困っている人がいたら呼んでください(笑)

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2008年3月15日 (土)

rhythm

渡ろうと思ったら点滅が始まった。
場所は名古屋市中区丸の内オフィス街のど真ん中。片側3車線の桜通。
時間帯は夜。サラリーマンの帰宅ラッシュのまっ最中だ。

ふと横を見る。同じ状況下に置かれたOLさん三人組のグループも嬌声を上げながら走りかけている。
前方には今まさに右折しようとせんタクシーの列。
大丈夫。余裕で間に合う。渡りきれる。こんなのは日常茶飯事だ。


と考えたところで気が少しゆるむ。
と同時に身体のある部分もゆるむ。

僕は駆けている。
横にはOL三人組。


「1、2、3、4」 とリズミカルな連続排気音を出力しながら僕は走る。
同時に視界の片隅にOLさん等の視線を僅かに感じる。


渡りきったところでそのまま僕は立ち止まることなく駆け抜けていったことはいうまでもない。

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2007年9月 2日 (日)

体重制限ありや

「今日はどこ行こか」と聞く。
「買い物」と答える。
「買い物はお金が無いから、公園にしよう」と振る。
すると「中央公園!」と答える。ブームだ。彼女らの。現在の。

正しくは『中部公園』という。最初から僕が間違えていたので子供達はすっかりそれで覚えこんでしまったのである。すまぬ。

三重県は東員町にあるとても良い公園である。
つい先日、真夏の最中にも行ってきたのであるが余りの酷暑日だったということもありその時は人出は疎らであった。
今日の行き先が決定したので今日はツインズと同い年の従姉妹の3人で行ってきた。
気温は割と高かった筈であるが乾燥していたのかカラッとした良い天気だった。風もあったし。汗をかいてもすぐ乾く感じ。いつまでもベタベタするのはかなわないから非常に気持ちが良かった。だから結構な賑わい。


で今日はあることに挑戦してみようと心に決めていた。
これだ。Chubu_kouen0
アスレチック風の縄梯子や網という障害を乗り越えて初めて辿りつく約束の地。それがこの巨大滑り台だ。
前回同じメンバーで来た時は途中まで行けたのであるが余りの酷暑と結構な高所恐怖感から志し半ばで挫折していたので今日こそはと父子従姉妹共に決意して臨んだのである。

リベンジということもあって各種障害もこ慣れており、今回は割とスムーズに登頂することが出来た。
しかしそこからが問題である。


結構な高さである。
7~8mくらいあるのではないか。
Chubu_kouen
意外と高いぞ。
パパもちょっと、怖いぞ。
思いの外高いのだ。下から見上げるのと上から見下ろすのとでは大違いだ。文字通り天と地ほどの違いがある。


意を決し、まず一人が降下。こういうときはさすがお姉ちゃんだ。ツインズ1号花音が先発隊に。
この子…勇気ある。パパなんかよりずっと。僕が同年代の時ならば尻込みしてへたり込んでいたに違いない。

続いて従姉妹、3号新桜。
長女なのに見事な末っ子ぶりである彼女であるがこういう時は頑張る。1号に続けとばかり飛び込んだ。


残るは2号里音、そして、僕。


「どうする?行く?」
「戻る」
「戻るのもちょっと大変だよ。後ろに人が並んでるよ」
「…パパと行く」
で行く。

こういうものは一度やってしまうともうこっちのものである。
次からは勧めてないのに勝手に登って勝手に滑ってきている。
ただ結構高いので事故があってはならぬから必ず付き添いで僕も一緒に登る。そして滑る。

ローラー式の滑り台だから、ゴロゴロとお尻が気持ち良い。
全身に振動が伝わり肩凝りもほぐれそうな気がする。
あーと言うとあ゙ーとなる。面白い。


で結果5セット。
登って下りて。子供に付き合って。実は自分も結構楽しんで。


で数時間後、まともに座れないほどの激痛が僕の臀部及び尾骶骨を襲う。

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2007年8月29日 (水)

しげるさん

ここのところ暑いのでちっともクールダウンどころかヒートアップにしかならないのであるが、それでも仕事を抜け出しての一服は欠かせないのである。

場所は東西に走る桜通に面した丸の内オフィス街の中の一角。
そんな時ここは同様の目的を持った同志の集うオアシスとなる。ただし前述の通りちっともクールダウンにはならないが。


ふと通りを見ると道路工事をしている。
片側3車線の中央1車線をつぶし、ラインの再マーキングをしているようだ。ただでさえ暑いのに焼けたアスファルトの上に熱いラインを引きなおす仕事をしなければならないなんて本当にご苦労様でございますと声援を送りたくなる。

で「工事中」と大きく書かれた看板を荷台に載せたトラックがハザードを焚いて中央車線に停車している。そのトラック後部の足場に乗っかり、旗を振っているおじさんがいる。

歳の頃は50代後半かもうちょっと上くらいか。
見るからに真剣だ。そりゃそうだ。中央車線で迫り来る車を脇に誘導するという行為は慣れなければ相当の恐怖を伴う行為に違いないからだ。
これだけ暑いと朦朧として突っ込んでくる車がいないとも限らない。さらに後方の作業員の安全も須らくこのおじさんの旗振りという誘導作業に懸かっている。
まさに命懸けの仕事だ。男の仕事だ。

それにしてもおじさんは凄い形相だ。遠方の一点を睨んでいる。仁王立ちだ。
腕の振り具合に一点の乱れも無い。実にコンスタントで一切無駄の無い動きだ。
よく日に焼けている。仕事焼けだ。男の顔だ。
ヘルメットを目深にギュッと被り、そこから覗く目は猛禽を思わせるが如くの眼光だ。仲間の安全を守るためには妥協は許さない、そんな男のいい顔だ。

プロだ。
このおじさんは紛れもない旗振りのプロだ。


一服が終わる。
おじさんを見る。
相変わらず一点の迷いも無い動きである。
もう一服しようか・・・このおじさんをずっと見ていたい。
このおじさんの仕事にかける執念を。
この男の生き様を。
このままずっと。

もう一服点ける。
僕はおじさんを見る。


相変わらず一点の迷いも無い動きである。
腕の振りの高さもスピードも一糸乱れない。
この人本物だ。プロ中のプロだ。


一服が終わる。
僕はおじさんを見続ける。
信号で車が止まっている時だろうが流れている時だろうがお構い無しだ。
一心不乱に腕を振り続けている。


ちょっと待て。


ちょっと待てよく見たらこのおじさん人間じゃないぞ。

Ojisan


しげるさん↓
05

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2007年8月24日 (金)

排気

歌を唄う場合の基本。それは腹式呼吸。
横隔膜をポンプのようにして息を吐く。そして吸う。この場合(吸うという行為)は意識的に行なわないのが良く、自然に吸われる形が理想。
つまり、息を吐き切ること。
息を吐き切ると自動的に吸うしかなくなる。まさにポンプ。

そこで息の吐き方。
ハッ・ハッ・ハッ・ハッと口から勢いよく空気を押し出す。
その際、臍の辺りがハッと発声するのと同時にへこむ様にする。

歌を唄う場合、例えば小節で区切って息を吐き切るようにしてみる。一小節でもよく、二小節でもよい。まずは自分のやり易い単位で。でもこの場合小節数を決めること。一なら一。二なら二。大事なことはその間で息を吐き切り、そして自然に吸って次の小節に繋げる。


次に声の出し方。

あ、その前に姿勢。
肩幅くらいに足を自然に広げ、少しだけ膝を曲げてみる。もちろん背筋はシャンと。そうでないと変なオジサンの如き立ち姿に。
腰にドーンと体重が掛かる感じ。

で声の出し方。
顎をちょっと引き気味にして、延髄のあたりから声が出るイメージをする。
ちゃんと声が出ると、延髄付近がビリビリとしてなんとも気持ちが良い。
ちゃんと喉が開いて、ちゃんとした声が出ることの快感。しかも自分で言うのもなんだが結構良い声。に聞こえる。

あと最後に気持ち面。
イメージ的には野球場のホームベースあたりから外野のフェンスに声を届けるように考える。例えマイクが目の前にあったとしても同様。
これも喉を開いていないとなかなか難しい。


というのが先日ヴォイストレーナーの方にザッと指導してもらったこと。
あるところにお邪魔した時に、偶然そのお方(因みに女性。若くてお綺麗なおねえさん)を紹介していただいたのだ。


腹式呼吸は10年近く前、ある機会に簡単なレクチャーを受けて修得していたから今回の指導はすんなり飲み込めた。
バンドで歌う際にも応用していた。
でも今回改めて本格的に再度指導され、とても新鮮な感動を覚えた。
この場合指導時間は関係ない。密度の問題だ。
そしてその場は紹介して下さった方も含めての即席トレーニング道場になった。


手拍子に合わせて 「ハッ・ハッ・ハッ・ハッ」 と息を吐く。
身体の余分な力を抜いて 「ハッ・ハッ・ハッ・ハッ」 と息を吐く。
「・」の部分で自然に息が吸われる。


しかしジョンもポールも見事な腹式呼吸で歌い切っている。
あの時代である。誰に教わったわけでもないだろうに。
レコードを聴いて、それを耳でコピーして、そして何よりも呼吸法までコピーしていたに違いない。全部自力で。
やっぱり凄い人たちだ。


手拍子に合わせて 「ハッ・ハッ・ハッ・ハッ」 と息を吐く。
身体の余分な力を抜いて 「ハッ・ハッ・ハッ・ハッ」 と息を吐く。

 「ハッ・ハッ・ハッ・ハッ」 と息を吐く。
 「ハッ・ハッ・ハッ・ハッ」 と息を吐く。

だんだん調子が出てきた。リズムにも乗ってきた。僕は力を抜いてリラックスしまくっている。楽しい。非常に楽しい。
 「ハッ・ハッ・ハッ・ハッ」 と同時に僕の身体からブッと排気が出る。


そして失笑される。

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2007年8月19日 (日)

そう来たか

ユーストアに買い物に行ったのである。星川店である。
で2階のユーシャレオで明日から着る肌着を奥さんに購入して貰ったのである。RENOWNの感度涼好(*)である。
(注*:ハイ・クールなタッチのメッシュ編み。吸汗速乾。半袖V首。二枚組。サイズM)
中国製かと思いきやタイ製であった。

こういう海外製のものの場合僕は目を皿のようにしてネタを探す。必ず何がしか見つかるからだ。ここで言うネタとはVOWネタである。
特に中国製のものはネタの宝庫である。
それは所謂「足マッサージ」が「足マシサーヅ」に強制変換されていたり「る」が「ゐ」と活用されていたり的なものである。
僕はそれを発見するのが大好きなのである。


Sinaun

件のRENOWNタイランドにもそれは発見された。其処には「しナウン」とあった。


その後も肌着買い付けは続くのである。僕はトランクス派なのであるが最近の僕のトレンドはニット・トランクスである。


濃い目の色を物色していたらチビが「パパこれにするといいよ」と自分でセレクトしたものを嬉々として持って来てくれた。


これだ。


Sarumata

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2007年8月16日 (木)

どんどんちゃ

「今日はこのCDにしよう」 とおぞましい絵のパッケージのCDケースを器用に開けてこれまた慣れた手つきでナビの自動開閉ボタンを押し更にピンポイントで必要なキー操作でそれを再生するのである。
それが10月で4歳になるうちの娘らが自家用車の乗り込んだ時の一連の作業である。

歌詞カードなどもちろん読めない。だから耳コピ である。
親の贔屓目と呼ばれそうであるが、客観的に判断して、彼女らはかなり耳がいい。しかもここに来て格段と肥えてきている。


冒頭の一曲目が我が娘らの愛唱歌である。


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2007年4月 9日 (月)

エフェクト

「ためしにやってみていいか?」 と僕はそれを指差して聞く。
こくり と娘たちは頷く。


洗脳されやすい僕はミドリとピンクの攻防戦が繰り広げられるCMを見かけてからすっかりブレーンウォッシングされてしまい機会さえあればいつか体験してみようと心に決めていたのだ。


場所はスーパーの陳列台。レジのまん前だ。
何種類か、目当てのものがそこにはおいてある。

「うむ。まず、こっちだ」 と一つを手に取る。
むーんなんか変わった形のノブだ。押す加減がわからない。二人の娘のうち一人を背中に負ぶっているハンデもあり、片手で同じ手を狙って微妙な量をコントロールするのはちょっと難しい。
で結果ぶわっと大量に吹きかけてしまう。腕の辺りに。うわっと思い無意識に服で拭く。

「もう一本いってみていいか?」 と気を取り直して僕は聞く。
こくり と娘たちは頷く。
片手で負ぶっている娘に床に下りて貰い、今度は上手くもう一方の手首に命中させる。
途端に猛烈な衝撃が鼻腔を襲う。僕の。そして娘たちの。
娘たちが叫ぶ。
「あっ!パパ。アアッ!臭い!」


妻のところへ小走りに3人で駆けていく。
「どうだろう?これでみんな虜になるかな?」 と僕は尋ねる。
「いや・・・ってか臭いよ。通ってきたとこ全部臭いが漂ってるみたいだよ」
「パパが臭い!」 娘たちが言う。


その後、妻の買い物に同行する僕は強烈にブレンドされたわけのわからない臭いのオーラを全身に纏い、結果、彼女らを虜にすることは叶わなかったことを知る。

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2007年1月21日 (日)

忘れ物

先日仕事を終えて帰宅する時、やたらかさ張る割には今日一日鞄が軽かったなあと思ったら昨日から入れっぱなしのカラカラに乾いた空の弁当箱を一日持って歩いていたことに気付いた。

同じ事例がここ半年で何度かあるのであるが、こういう時など俺に救いはあるのかと急に自信がなくなってくるのである。

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コウモリ

朝、寝ぼけまなこで雨戸を開けたら目の前に何かがポトッと落ちてきて床に転がった。反射的に身体が硬直する。ぅおぃと声にならない声が腹から出る。
同時に何かの音が聴こえる。何やらチーチーと幽かな音である。よく見るとその何かから発せられている。
仰向けで、緩やかに動いている、何か。


妻も同様な経験を持っており、その時はそれが彼女の頭頂部を直撃した。
その折、妻が朝一番から素っ頓狂な声をあげたのは言うまでも無い。また何とも気の毒としか言いようが無い。


まあ彼にしてみれば雨戸の裏側という安息の地での安らかな眠りからいきなり出し抜けに引っぺがされていい迷惑&ショックだったであろうがこっちのショックも半端じゃなかったのである。寝ぼけている脳が瞬間的に覚醒したほどである。逆に彼は文字通り口から泡を吹いて気絶していたが。

でそのままにしててもしょうがないからスコップですくって庭のプランターに置いてあげた。
こんな寒い朝に無慈悲のようにも思えたがかと言って他にどうしようもなかったからだ。

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2007年1月12日 (金)

キスマーク

カッターシャツの首元にそんなものが付いていたら即家庭崩壊の危機に直面することになる。
だが僕の場合はコートの首元にベッチョリと付いているのである。彼女達に熱く抱擁された時に印されたものだ。

それが真っ赤な口紅のような扇情的なものであったなら随分と色っぽい話にもなってくるのであるが僕のものはチョコレートとかソースとか大体そういう類なのである。

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2006年12月26日 (火)

暗闇での闘争

出発時間が早かったので途中車内で運転しながらコンビニで購入したサンドイッチと缶コーヒーという朝ごはんセットを食べたのである。


で現場に到着して一息つくと途端に来たのである。ところてんのようだ。
「ちょっと、行ってくるわ」とメンバーに声をかけてそそくさと約束の地に向かう。
しかし、約束の地はヤワじゃなかったのである。どこを探しても電灯のスイッチが無かったのだ。察するにまだ開店前で恐らく元から照明関係の電源が落ちていたのだと思われる。

仕方なく僕は携帯電話の待ち受け画面から発せられるか弱い明かりを頼りに一歩一歩、歩を進める。事態はかなりの切迫状況だ。一刻の猶予も許されない。衝動との闘争だ。
程なく何とか約束のドアに辿りつき、入室する。一番手前のその部屋は、あいにく和室(和式)であった。


もうあとは事を済ませるだけだから頼りの携帯を上着のポケットに仕舞う。ここまで来たら何とかなる筈だ。
手探りで四方の壁を触る。意外と広いぞ。ゆったり個室だ。さすが全国チェーンのショッピングモ-ルは一味違う。
上着を脱ぐ。邪魔になるからだ。こういうところはドアの上の方に引っ掛けるヤツがついている筈だ。で探す。あれ?ない。ないぞ。どこに上着引っ掛ければいいのよさ。で仕方なく床に置く(涙)

それにしても真っ暗だ。冗談抜きに何も見えない。
ズボンも脱ぐ。当然だ。事態は緊急を要している。限界がもう近い。
だがそこからが真の問題だったのだ。


全くの暗闇というものほど人間にとって不安なものは無い。
発作的なわけの分からない恐怖に見舞われた僕はさっきポケットに仕舞った携帯を探そうとする。上着を脱ぎ捨てた辺りに手を伸ばす。何故か空振る。真っ暗闇で距離感が全く鈍ってしまったようだ。そういえばここ意外と広かったんだ。
その上衝動は情け容赦なく僕を急襲する。携帯は諦める。だが失敗は断じて許されない。

でも何しろ何にも見えない真の闇の中にいるのだから目を開けてようが閉じてようが全く区別が無い。むしろ開けている方が何かが見えているような気がして混乱してくる。ならば目を閉じて感覚一本勝負だ。自分を信じるのだ。


僕の唯一の気がかりは、モノがちゃんと器に収まるかどうかであった。
真っ暗闇の中でその一連の作業を済ませたという経験は人生初のことであった。
飽くなき闘争心というか止むに止まれぬ衝動を抱えている時には人は思わぬ力を発揮するものなのだ。
いろんな意味で大きな仕事を終えた後、全ての時間的制約から解放された僕は携帯の明かりで最終確認をする。


結果は、若干のOBを除き良好だった。

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2006年12月22日 (金)

師弟

会社の後輩のKクン(10コ違い)と僕は非常に仲が良いのである。
僕と彼とはある意味、師弟関係にある。彼は僕を師匠と呼ぶ。僕は彼を弟子と呼ぶ。ンなこたない。では何の師弟か。エロ師弟である。またある時は師弟関係が逆転する。それが妙味。ンなこたどうでもいい。


でKクンである。

休憩中に少年マガジンの巻頭グラビアを僕がパラパラとめくっているとこう尋ねてきた。「おっ、紗季(相武)ちゃんですか~なかなか目の付け所がナイスですねえ」
「いや、俺の場合さ、紗季ちゃんよりもさ、まさみ(長澤 )ちゃんなわけですよ」と僕。
「いやいやいや~。…あの~レノさん。僕レノさんとかぶっちゃうんですよね~いつも。やっぱセンスがおなじってことっスかね~どこまでもついて行きますよ~師匠」とKクン。


というわけで先日我が家がコミュファではなくフレッツ光プレミアムにグレードアップした理由はここにあるのである。

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2006年9月17日 (日)

ここここここが好き

小林聡美さんがそう言うパンのコマーシャルがあった。

日常的で何気ない時にそれに出合ったりする。普段気にも留めない時やところで。


一生懸命履いた靴が左右逆だったりフード付きの上着のフードがお尻に垂れ下がっていたりシャボン玉を追いかけて夢中で走っていく姿を見たりしている時なんか、そんな気持ちになる。

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2006年9月14日 (木)

大きなお世話

ぼくはいつも栄のセントラルパークを通る。
仕事帰りのこと。

尿意を催したので公衆トイレに入る。
そこでぼくは、ある光景に出会う。
車椅子に乗った方が、小便器の前に居たのだ。


彼は見るからに物凄い苦労をしながら体勢を整えていた。
何もそれは、別段珍しい光景ではない筈だ。
ただ出し抜けにその場に出くわしてしまったぼくは一瞬(ほんのコンマ何秒だったと思う)だけ動きを止めてしまったことは事実だった。
トイレの中は混雑していた。ただ、彼の隣りの場所だけがポッカリと空いていた。個室になっていないことが残酷だと思った。
そしてぼくは、彼の隣に並んだんだ。


本当に彼は苦労しているようだった。大きい息遣いや横目で見える光景だけでもそれが充分に窺える。きっと彼は随分前からここで苦労していたのではないか。彼の動きからそれが判る。


何か手を貸そうかと思う。
でも「お手伝いしましょうか」という言葉が喉に痞えてどうしても出て来ない。
ぼくは躊躇する。
物凄く、激しく躊躇してしまう。


何故なら彼は一人でここに来ている。人ごみの中に。介助する人はいない。ならばそれは彼の意志の筈だ。
こんな事態は充分想定した上での行動である筈であるし、彼にしてみればごく普通の行為であるに違いない筈だからだ。
見るに見かねて手を貸すといったぼくの薄っぺらい善意など疎ましく感じるかもしれない。大体どう手を貸せばいいのかも解らない。そんな経験がないからだ。
そこに差別意識や善意の押し売りを彼は感じるかもしれない。こちらにはそんなつもりは100%無いにしても。
彼がどう感じるかはぼくには解りようもないのだ。同じ立場に立たない限り。悲しいけれど解る筈がないのだ。


結局、ぼくは何もしないことに決め、その場を後にする。


帰宅後、妻にその話をする。


誰かに話さないと、ぼくはその時感じた罪悪感と自己嫌悪の様なものからから逃れられなくてどうしようもなかったからだ。

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2006年9月 7日 (木)

甘酸っぱい夏のおもひで

夏も終わりました。

夏といえば思い出すものとして僕には強烈なメモリーがひとつあります。それはロッテのキャンディ小梅ちゃんのように切なく、キュンとする(というかツンとくる)ような甘酸っぱいマイメモリーです。
元々は2年前にセルターブのBBSに載せた記事なのですが、幸いなことにログが残っていたのでこのブログにも記録という形で残しておきたいと考え、再び上梓しようと思うに至りました。
思えばこの頃からブログというフォーマットをボクは渇望していたような気がします。
それでまあ、以下のとおり、原文のまま転記します。


---
「衝撃映像」

目撃しちゃったんです…(@@)
ん~映像じゃないな…生で見たから^^
…いやね、先週仕事でとある刈谷のお客様のとこに打ち合わせに行ったんす。年配の営業の方と。
で暑かったんす、当日は。とにかく暑かったんで待ち合わせの後お客様のとこに行くまで時間の余裕があったから喫茶店で冷たいもんを飲んだんです。出されたもんだけじゃ足りなかったからお冷やもガブガブと。

それでまぁ打ち合わせは滞りなく済んだんです。けど、終わったあとにトイレに行きたくなりましてね。あー小さい方です。水分沢山摂りましたから。で二人で仲良く入りましたよ。トイレに。
で手を洗った時に気付いたんです、ハンケチを持ってなかったことに。
ペーパータオルや乾燥機も無かったんでペッペッとしようとしたらその年配の方が「あーこれ貸したろか」とハンケチを貸してくれまして、一瞬う~むと思いましたが親切な人だなと思い素直に借りましたよ。
まあそんなことは些細なことなので忘れてました。


ところが昨日また社内でその人と話しこむ機会がありまして。
ちょうどその日も暑かった。台風一過でね。いい天気で。
仕事中だっちゅのに話してるうちその人もリラックスしまくったんでしょうね、ズボンのポッケからハンケチをオモムロに取り出し、話をしながら額の汗を拭いだしたんです。それはボクに貸してくれたのと全く同じものでしたね。
…そこまではいい。そこまでは全て順調だったんです。

ボクとの雑談が弾みながらそのお方はですね、吹き出る額の汗を拭うだけでは飽き足らず、ハンケチは汗したたる顎さらに首そしてほのかに地肌の露出した頭頂部へと移動していったのです。
そこで話を切れば良かった…忙しいからとさっさと仕事にかかれば全てよかったんです。後悔先に立たず、です。
ところが話は延々続き、行く先を求めてとどまる所を知らぬハンケチは最終的にそのお方のワキヘ…恐らくは想像するに耐え難い湿度と酸味の充満した禁断の場所へ。

彼は笑顔で話しながら丹念にそのポイントを拭い終え、そしてようやくボクは開放されたのです。
無くて七癖というかそれはそのお方にとっては至極自然な行為であり、事実その手つきや笑顔は自然そのもの、ひとつも作ったものではありませんでした。普段からきっとごく普通に行なう一連の作業なんでしょうね。


しかしそのハンケチを貸された者の身になってみればこれは重大なダメージをメンタル面へ与えるに充分すぎる光景でしたね。
いま思うとあの日トイレでハンケチを借りたあと、両のてのひらが妙に酸っぱい臭がした気がしたような…フラッシュバックのようにモノクロのスローモーションであの日のトイレの光景が何度も頭の中をよぎる今日この頃です。
(2004.9.2)
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2006年9月 6日 (水)

ある部分バカ化

出勤時。

車を走らせて暫く経ってから気付いた。忘れたのだ。
今更もう戻ることは出来ない。カーステ(死語)の時計を見る。もし引き返したならば確実に遅れてしまう時間帯だ。諦めよう。
まあいいや。一日くらい持ってなくたって生きていく上で何の問題もない筈だからだ。でもこうして思うとまさに肌身離さず身につけているという意味の「携帯」というその代名詞の意味がしっくりと来る。

しかしいざその環境に身を晒した時いかにそれが日常の行動に深く食い込んでいたのかがよく解る。「依存」しているとまではいかないまでもそれに近い状態ではあったのかも知れない。


まず、出先において時間がわからなくなる。それまでのぼくは腕時計をしていたがそれを持つように以来外してしまった。時計代わりとしても充分役立っていたことがわかる。
そして次に、外に居る時にBBSやブログの状態をチェック出来なくなる。まあそんなものは別にすぐにチェックしないでもいいわけであるが。余程のことがない限り。そこまでいくとそれこそ完全な依存症だ。
それから、メールのチェック。まあこれも差し迫ったことでない限り別にすぐに返事を出さなくてもいいわけではある。同報メールなどで届いた内容に我先にと早く返事しなきゃ などとそれに縛られるなんて愚かだと思うからだ。返事の速度など別にどうでもいい。


うーんまあいいや。
つまり忘れたわけです。ケータイを。家に。

でそうしてみると不思議なことに非常に解放された気分になるものなんですな。
まず次々に飛んでくるメールの呪縛から解き放たれる。携帯を持たないという日常がこれほどさっぱりして清々しいものなのだということに改めて気付きました。変な喩えかもしれないけれど無重力空間にポーンと放り出されたようでいてしかも地に足が着いているような感覚。
出所のわからない切迫感がなくなることほど気持ちのいいものはない。ちょっとした空き時間や仕事中にコソコソとメールチェックしなくてもいい。よく考えりゃその光景って奇妙なもんだ。時間帯によっては道行く人の半分くらいはケータイを見つめながら歩いているではないか。今じゃそんな光景が当たり前になっているからあまり違和感を感じないがそりゃ肝心な部分が麻痺しているだけなのかも知れない。
メールのチェックなどは半日に一回で充分だ。それ以上に緊急の用件ならばメールなどというある意味姑息な手段など用いるはずがないからだ。用事があるならダイレクトに電話して来ればいい。そんなところにワンクッション置くからどんどん大事な何かが希薄になっていくんだ。
よし。明日から自分に連絡がつくところに身体を置いている間は電源を切っておこう。決めた。

と決めたはいいがひとつ問題がありぼくは帰り間際にいつも妻の携帯にメールを入れるようにしている。乗ったバスの時間を知らせるのだ。いわゆる帰るコール。帰るメール。それが出来ない。これには困った。
これが出来ないということは、温かい晩御飯にありつけるという自分のライフラインが断たれるという結果に直結するからだ。

仕方がないからぼくは帰り道に公衆電話を探す。だが驚くことにこれが意外に見つからない。いざ、探すと。丸の内オフィス街には。
普段通りなれた道であるにも関わらず、どこに公衆電話が在るのかさっぱり分からない。目には見えているに違いないのだが重要でないものは何も見えていないということになる。
とすると人間の網膜に入ってくる情報などというものはいい加減なものである。自分にとって不必要なものはばっさりカットして捨ててしまっているからだ。


でメインストリートから少し奥に入った所に「電話」という看板があるのが目に留まる。こんな所に電話があるんだとちょっと感動する。でも電話ごときに看板って。確かにありがたかったけど。しかし携帯電話を持たない人にとっては何とも不自由な世の中になったものだ。
当然テレホンカードなど持っている筈もない。小銭を探す。10円玉がいくつかと、100円玉と500円玉。
あれ?公衆電話って100円使えたっけ。使えるにしてもお釣り出たっけ。えーっと、先にお金を入れるんだったっけ?・・・使い方をすっかり忘れている。我ながらこれにも驚きを隠せない。よく考えたら何年ぶりだろう。公衆電話を使うのは。
で、使ってみる。何故かちょっと恥ずかしい。公衆電話の受話器に向かって喋っている自分が丸の内オフィス街に何とも不似合いなような気がしてくる。道行く人の何人かがぼくに向ける視線がちょっとに気になったりする。そんな風に思う必要なんて何もないのに。


先に書いたが今が何時なのかが解らないのも困る。バスの定刻までの時間調整(本屋の立ち読み等)など自動的に不可能になる。セントラルパーク内に時計を探すがどこにも見当たらない。よくよく考えたらなんて不親切なんだこの街は。まあ自分のことを棚に上げての我儘な言い分ではあるが。
でも(文字通りではなく)大きく目を開き、あたりを見てみると意外に其処彼処に時刻を知る術はあるのだと気付く。
でもそれ以上に考えてみるとそもそも帰るだけなのだから正確な時刻など必要ないではないか。10分や20分違っていようが大した問題じゃない。


こうして初めて気付くことが出来ることもある。今日のようなちょっとした不自由な思いをして。
ケータイを持たない、必要以上に使わないということは今の時代ある意味いさぎがよいことなのだと知る。同時にまた自分という存在を上手くコントロールする必要性も出てくるし、だから工夫も必要になる。

つまり、それが便利であるということは同時に、脳に汗し深く考えなくても済んでしまうことに繋がるということなのだ。

やっぱり肝心なものは目には見えないものなのだなあ。


思えばぼくの学生時代、そんなものなどなくても充分色んな活動が出来たし、言ってみれば恋愛だって思いのまますることが出来た。今は病院以外ではお目にかかれないベルだって全く必要なかった。
今という時代は確かに、便利かもしれない。
でも頭の中の使っている部分は大きく違ってしまっているような気がする。

深く考えたり、身体を使って答を探したり、相手の気持ちを知ろうと精一杯努力したり、思いの丈を手紙を記して届けようとして届けられなかったり。
遠回りで不器用な努力も確かにあったかもしれない。でも振り返って考えてみるとそれがひとつ残らず無駄ではなかったのかもしれないとさえ思う。
いまの時代これだけ便利になって効率が良くなって、何より一生懸命頭を使うことが少なくなってきて尚更、そう思う。
一見無駄なことに見える中に間違いなく何かがあったのだ。大切なものが。


そして気付く。
あの頃に比べてぼくは確実にバカになってきている。ある部分において間違いなく。

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2006年8月 2日 (水)

お兄さん朝から若いわねえ

…と言える仲である。相方は直属の上司である。ちょっとというかかなり癖があるが普通の愛すべきオッサンである。


始業前、PCを立ち上げている時に隣の席の上司が呟いている。
「ちょっと、これさあ、何だこれ?」
どうやら僕に向って言っているような感じだ。朝から鬱陶しいから無視する。よくあるパターンだからだ。
変な所をマウスで触ったりするからタスクバーが消えたりハンパじゃない数のウィンドウを開いていたりトリプルクリックが得意だったりと初歩的なトラブルが非常に多いのがこの手合いである。
無視していると「ちょいちょい」と指で僕を呼ぶ。んだよこっちは今ゆっくりとサンドイッチ食べてるところなんだけど。ちょっと寝坊して家で朝ご飯食べれなかったんだよ。勘弁してくれよ忙しい朝なんだからさあ。

で、渋々彼のディスプレイを覗く。
「何か知らんけど立っちゃっとってさあ、これが。どうしてもなおらないんだよね」と最早呟きではなくオフィスに響き渡る声で上司は言う。
確かに、立っている。朝から。画面のど真ん中に。IMEの言語バーが。タスクバーに常駐させておけばいいものをわざわざ引っ張り出してしかも立てている。理由はわからない。

「何で立ってるんですか」と真面目くさって僕は訊く。
「知らんがや。朝見たら立っとったんだわ」と上司は答える。
「ナニを立てとるんですか朝から」とこの辺からニヤニヤと笑いが出始めてしまう。
「立てたくて立てとるんじゃないがや。勝手に立っとるんだ」


普段は五月蝿く鬱陶しく下請けに対する居丈高な態度は鼻持ちならないところがあるAB型の上司ではあるが、罪のない冗談を言い合っている時は、楽しい。

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2006年8月 1日 (火)

ゲバ戦記

「げば」と自分でも吃驚するくらいの音が出た。

我が身に何が起こったのか瞬間的に覚る。無意識に舌を出し、ぶるっと身体を震わせ僕は歩道の中央で立ち止まってしまう。すぐ脇を歩いていた女性がささっと僕から距離を置いた。
両者とも不可抗力以外の何物ではないから慌てたのはお互い様であろうが、僕から解放された奴は挨拶もなく置き土産に「びん」という音のみを残し一目散に去っていった。


帰宅する時。
桜通りを東へ歩く。少し残業したせいで道行く人の数も疎らになっている。この時間になるとアスファルトの上でも蒸し暑さは和らぎ、心地よい風が首元を掠めたりしてくれる。
で歩きながら一服しようかなと思い煙草を口に運ぼうとしたその刹那。
その心地よい風に乗って唐突に奴は来た。

煙草をくわえようと僅か数ミリだけ開いていた僕の唇へまっしぐらに奴は突入し、そのまま勢いに任せて僕の口腔奥深く、のどティンコの辺りまで一気に到達する。全くの無防備であった僕はそのあまりの唐突さに対処することなど到底敵わず不覚にも「げば」と発音するに至る。
大きさからいってこいつは、たぶん、ハエのたぐいだ。進入速度からいってアブだったかも知れぬ。とにかく目にも留まらぬスピードで奴は僕と邂逅し、そして去っていった。
その後そこには喉に指を突っ込み必死に「カーッかはーッ」と痰を切らんとするような不快と感ずるに近い音を出し続ける一人の涙目の青年が残された。


今後もし道端で突然何の前触れもなく大仰にげばと咳き込み始めた人を見かけたら、そっと同情してあげようと思う。

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2006年7月29日 (土)

アロハ

クールビズが流行して久しいが、あれもその一環なのだろうか。


丸の内オフィス街。
スラックスに革靴、片手にはアタッシュケース、そして派手なアロハシャツを着た中年のおじさん3人が信号待ちしながら深刻な顔つきで腕組みをして何か相談をしていた。

一体どういう職業の人たちなんだろう。

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2006年7月24日 (月)

御意

深夜。

花音(ツインズ・姉)が寝返りをうった時に両のふくらはぎが里音(ツインズ・妹)の顔面にかぶさった。


里音は「わかった。わーかった」と言ってそれを払いのけ何事もなかったかのようにスヤスヤと再び眠りに入っていった。

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2006年7月13日 (木)

ある週末

音楽好きな仲間で一回覗きに行ってみようという事になる。


仲間といっても仕事の取引先の方たちお二人と僕を入れての三人であるが。
今池のとあるバー。平日の営業時間は20時から。結構早めに着いた。
で地下に下りる。店内にはもう既に常連さんと思しき一癖も二癖もありそうな面々が一斉にこちらを見る。
場が醸し出す何とも言えない空気から彼らの吸っている煙草が気のせいかマリファナに見えてくる。
奥の方の一段下がった所にステージがある。壁にギターも数本ぶら下がっている。こいつはこの上ないほど、思い切りディープでブルーズな雰囲気だ。

うちらの一行は完全に仕事を離れてZIMAを飲みながら他愛もない会話に花を咲かせる。うちの会社では同年代で音楽の話が出来る人なんて皆無(大体がパチンコや競馬の話だ)だからとても新鮮である。いいなあ、こういう感じ。

暫くして馴染んできたところで同行の連れがマスターに声をかける。
「ちょっと演らせてもらっていいですか」
アノちょっと・・・もう行くの?まだ早いんじゃない?いいのかなあ。
だってそもそもうち等3人じゃんね。頭数足りんやん。ベースは?・・・え?マスター弾くの?
で。
3人+マスターでゾロゾロとステージに(笑) その頃にゃ酔った勢いもあって心構えも整って。


「何やる?やっぱブルース?」
「うん。ブルースいいね」と言いつつ僕は壁のテレキャスターを借りる。
「じゃあ、キーは・・・?取り敢えずAで?」などと適当に打ち合わせして。で誰から始める?それぞれ顔を見回す。じゃ俺イントロ弾くよ。
・・・でそれから立て続けに2曲。1曲目はAで2曲目はEで。バリバリのアドリブ。こういう展開になりゃなんちゃってブルースギタリストの本領発揮か。ワンパターンと言われようが知ったこっちゃねえぜ。こないだバンドの練習の時にチョロッとブルースジャム齧っておいたのがこんなところで功を奏すとは。

しかしブルースのジャムセッションの場合、止めるのには結構勇気が要るのである。わかる人にはわかる(笑)
こういうときはやはり百戦錬磨なのだろうマスターにより二曲とも頃合を見てエンディングフレーズが飛び出してようやく終わる。
意外なことに曲者風な常連さん達からも結構大きな拍手貰ったりして。
でもあんたらホントに聴いてんの?いや、絶対聴いてないな(笑)


しかしそれにしてもいや楽しかった。気持ちよかった。ハマってしまいました。もはやリピーターですね。
何より痺れたのは壁にかかっていたテレキャスターのチューニングがバッチリ合っていたこと。そういう部分にマスターの生真面目さが窺われました。
だから音楽好き、バンド好きには絶対オススメ。
最高のお店です。今池近辺に繰り出した際には是非。
ただし知らなきゃ絶対に足を踏み入れるはずのない感じの佇まいのお店ではあるが。


南蛮屋

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2006年4月14日 (金)

末期状態か

一服のために定期的に外に出る。気分転換も兼ねている。
ポケットには携帯を入れていく。メールチェックとかオフィスでは出来ないプライベートな急用の電話をしたり。理由は色々ある。


今日、エレベーターを降りてすぐ携帯の待ち受け画面を覗いたら新着メールがひとつあった。
で内容を読もうとしたその刹那、着信が入った。妻からである。タイミングとしてはバッチリだ。仕事中はサイレントにしているので着信があっても気付かないことが多いからである。

話の内容は一昨日チビに落とされて壊れた炊飯器の代替品の仕様についての相談であった。我が家の切迫した家計との兼ね合いもある訳である。
電話口で僕は自分の意見や考えを述べ、そして最終的な判断は妻に一任した。それまでの通話時間、およそ5分弱。
ああもう事務所に戻らなきゃ。あいついっぺん煙草吸いにいくとなかなか戻って来ん などと上司に思われてはたまらない。そうでなくても煙草吸いの肩身がどんどん狭くなってきているというのに。
ああ早くメールチェックもしなきゃ と妻と話しながら考える。もう電話切り上げてもいいかな。俺、今仕事抜け出して煙草吸いに来てるだけなんだ。まあいいや。メールの内容だけ確認して戻ろう。
でズボンのポケットをまさぐる。あれ?携帯がない。さっきエレベーター出たときは間違いなく手に持っていたのに。
妻と話しながら片手で身体のあちこちのポケットを探して回る。ない、ないぞ。俺携帯落としたか?
エレベーターホールの方を覗いてみる。落ちてない。
まさか。エレベーターを降りる時にポロッとポケットから滑り出しその僅かな隙間から落としてしまったか。となるともう取り返しが付かないぞ。
そうこうするうちに携帯のことが気になって妻との会話も心ここにあらず状態になってくる。

・・・ない。
俺、携帯落とした。


その時気付く。
携帯で今俺喋っている。

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2006年4月 7日 (金)

住めば京

有休を取る。

普段出来ないことをする為である。
目的地は、名古屋市。港区。僕の生まれ育ったところ。まあ言ってみれば故郷である。
桑名から23号線を車を走らせる。
途中、大事な忘れ物をしていることに気付く。木曽川あたりで。で急いで家まで引き返す。でまた走る、走る。大幅な時間ロスだよ俺よしっかりしてくれよ。

忘れたものとは、保険証券。
行き先は港区の小さな郵便局。


そこの小さな郵便局で、実家の母が(元々は父が)、僕が18歳の時から僕にかけてくれていた養老保険が20年経って満期になったのである。幸せなことに僕は20年間死亡も入院もせずに今日まで生きてこられたわけである。
んー20年かあ。
その間僕は親父を亡くし家を出て四日市に住み結婚し桑名に移り新しい家族が増え気が付いたらすっかり桑名の人間になった。
しかし20年かあ…歳くったなあ。

でまあそれを引き出しに行くという寸法である。その郵便局へ行くのも20年ぶりくらいかもしれない。
ね。これは一日会社休む価値あるでしょ。
それを証券忘れるとは何事だ俺よやる気あるのか。


(ここで帰宅後妻から鋭いツッコミあり。
「今日どこまで行ったの?」
「名古屋よ」
「何しに行ったの」
「何て、昨日話したじゃん。保険が満期になったから払い戻しに行ったんだよ」
「何で名古屋まで行ったの?」
「何でて・・・何で?」
「郵便局は全国どこでもいいんだよ?何しに名古屋まで行ったの?」
「え…?…あ……そうなの??」
何しに名古屋まで行ったのだ僕は。しかも有休とって。そんなら会社休まなくても良かったじゃんか。まあ、いいや。済んだことだ。休暇と思おう)


で、何だったっけ。
あそうだ。今日は陽気もいいし車の中は冷房をかけたくらい暑かったんだ。
で喉が乾いた。昔よく通っていた近くの喫茶店でも飛び込もうかと思う。

だがその店の前まで来た時、僕は言いようのない寂寥感に襲われた。
確かに、ここは馴染みの喫茶店では、ある。
だが何かが違う。
町並みもそうだ。目をつぶっても歩けるくらいこの辺りの地理は頭の中に残っている。だが目に映る景色は僕の記憶の中のものと微妙にずれている。

結局、僕は自動販売機でジュースを一本買って飲むことにした。


そして気付いたのだ。
それは、かつてここで暮らしていた僕という人間はもう記憶の中にしか存在しておらず、だから、僕はもうここの住人ではないということなのだ。
僕は明らかに、其処においては異邦人であり、そして其処に留まるべき人間ではないことを僕は知ったのだ。
僕の帰るべき場所は、もう、ここではないのだ。

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2006年4月 2日 (日)

再会

報告を。

「奇跡」
僕は歌い切ることが出来た。
本音を言うと、実はとっても怖かった。高音が出るかどうかの不安もあった。
比較にはならないかもしれないけれど、荒川静香さんが演技の前にひたすら自分と向き合っていた姿が僕の支えになったところも実は、ある。
今の自分よりも強くなりたいから僕はこれを歌うのだ。だからそれは、誰のためでもなく自分のためなのだ。そう昨日決意した。
そして、僕は乗り越えた。


その場で、思いもよらなかった人と再会する。
それは、偶然というものを完全に超えているとしか言いようがない。
お互いが、何でここに居るの? と言う感じなわけである^^


その方は、思い遣りのあるとても良い人である。
立場的には9年前の僕の置かれた状況とそっくりそのままと言ってもいいくらい。だから僕にはその人の気持ちが良く解る。


勇気は、出す為にあるんだ。
出さないのなら、それは勇気じゃない。
想いは、形に表すべきだ。
胸に仕舞っているだけの想いは、実は伝わらないんだ。

それは、この9年で僕が掴んだ真実だ。

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2006年3月24日 (金)

約束

「今度、必ず家族連れて来ますから」

僕はお店のお母さんに声をかけた。申し訳なさが手伝っていることも勿論あるが、しかし何より偶然出会ったこのお店の佇まいというか空気に僕は懐かしいものに出会ったような気持ちにすらなっていたのであった。
今のところ店内は閑散としているが何しろこれから昼時を迎える時間帯だ。こんな訳の分からない人間の相手をしているほど暇じゃないようだ。
「ああ、はいよ」と素っ気無く母さんは答える。
「ありがとうございました。今日は時間がないので申し訳ないですけど、必ず、来ます」僕の言葉にもう返事はなかった。


ほんの5分前。僕はバス停に立っていた。
風雨に晒されたポールに取り付けられている時刻表を見る。あと7〜8分でバスが来る。それを逃すと次は30分後になる。

実はバス停に向かい歩いている時から、前兆はあった。
だがまだその時は気にならない程の軽さであった。
しかし今は違う。

既に第3波、いや4波若しくは5波か。正確には分からない。
何れにせよ紛れもなく最早時既に遅し という段階に差し掛かっていることを僕は悟る。限界が、近いのである。

例えばもし仮に、このままバスに乗ったとする。
想像力を働かせるまでもなく、まさにそれは最悪の状況だ。
座席でもんどり打って「すいませんお願いです停めて下さい」と僕は泣きながら運転手さんに訴えるであろうことは想像に難くない。


どうする。

とにかくまずは出直した上で態勢を整え次のバスにするか。
だが時間的余裕はない。それでは約束の時間に大きく遅れてしまう。
ならば玉砕覚悟で乗り込むか。だがそれは経験上余りにも危険極まる行為だ。何故なら僕の乗るバスは高速バスであり、一度高速に入ったら目的地まではノンストップだからである。となると最悪の状況よりもっと最悪の事態になりかねない。


左右を見る。目の前には片側二車線の道路を挟んでガソリンスタンドがある。そこまでダッシュするか。車の間をかいくぐって。
しかし今の僕に走ることは余りにも危険だ。ここまで来ると一瞬の弛みも許されないからだ。気の緩みも、筋肉の弛みも。断じて許されないのだ。

草むら…?
一瞬誘惑に駆られる。しかしすぐに却下する。
夜ならまだしも今は真昼間だ。しかも現在スーツ着用だ。
まあ、深夜だろうが何だろうがそれは許されざる行為であることは違いないのであるが。

そして閃いたかのように僕は後ろを振り返る。
うどん屋が其処に厳として在った。

よく考えたらここにうどん屋があることを僕は知っていた。しかしいつもは朝早くにこのバス停に立つのでシャッターが閉まっている光景しか目にしていなかったのだ。
そのうどん屋が、開いていた。


晴れやかな気持ちで後ろ手に引き戸を閉めたところに丁度、バスが、来た。

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2006年3月17日 (金)

キムチ爆弾

帰宅すると大体が家族の食事はもう既に済んでいる。
だから僕はいつも一人でご飯を食べる。
いや、一人で というのは正確ではない。厳密には3人で である。


左脇に上のチビ。右脇に下のチビ。
次はこれ お茶どうぞ お替りは? とせっせせっせと接待してくれるのである。
手を離すと二人とも椅子から転げ落ちるので、文字通り二人の子供を両脇に抱えて僕はご飯を食む。
両脇ならまだしも、パパの腿の上は二人が虎視眈々と狙う玉座である。ここに来られるともはやお手上げである。これまた文字通りのお手上げ。ホールドアップ。ご飯中止。何故なら僕が箸で取ったおかずは全て子供の口に消える故である。お前らさっき食ったばっかと違うんか。
また当然、僕のおかずも同時に餌食となる。手づかみで持っていかれる。

ただ、辛いものを除いて。


僕はキムチ大好き人間である。美味いキムチさえあればご飯何杯でもいける。僕の影響からか妻も結婚してからキムチ好き人になった。
今日の晩菜にも並んでいた。プラケースに入ったキムチ。当分(といっても一週間弱)はこれで持ちそうだ。

とする内に下のチビが接待にもおかず横取りにも飽きてきた。
キムチの容れ物で遊んでいる。
ようやく落ち着いてご飯が食べれそうだ。


とツルッとチビの手が滑る。
あっ と思う。

次の瞬間、視界からキムチの容器が消える。と同時にゴンと床に何かが落ちる音がする。
「あーっ!やった」と僕は叫ぶ。
「何やった?」と妻が叫ぶ。
「あーっ!!」と夫婦同時に叫ぶ。

横倒しになったキムチの容器。幸い中身の全部は飛び出していない。大事には至らなかったようだ。
「ダメでしょ!キムチで遊んだら」とお仕置きに右手をしっぺする。「あーん」とチビは泣く。
拾い上げたキムチの容器を元に戻し、何事もなかったかのように僕は食事に戻る。ひと時、チビからも解放される。


しかし。
これだけで済んだわけではなかったのである。
キムチは、意外と飛ぶのである。


キムチの容器の上部方向。
爆心地から半径約2~3mの所までその破壊力は及んでいたのであった。それは平面的な距離ではない。立体的な距離である。


プリンタ上部:溶液の痕跡あり
壁:僕の背丈の部位にキムチの小片を発見
ピアノの奥に隠してあった僕の大事なギター:大片の付着を確認


そして今、これを打つキーボードにもその破壊力の一環を見て取れるのである。

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フォロー不可能

午前11時55分。


今から電話を一つかけても微妙な時間である。下手すると話の途中でチャイムが鳴ってお昼休みに掛かってしまう。
慌ただしい中のふとした空き時間。社内が禁煙じゃなければ仕事の手を休めてここで一服する頃合いだ。


どこか遠い席でピピッとアラームが鳴った。
もうじきお昼 という意味での設定だろうか。

ふと気が付くとそこはかとなく何やらいい匂いがしてくる。
餃子のようだ。

匂いの元は、割と近い。


いや。
すぐそばだ。


横を見るとゴソゴソと上司が弁当を広げ、一人モグモグと食べだしている。
僕は目を疑うというより、思考が停止した。


暫くすると、お昼のチャイムが鳴った。
「あれ?まだ鳴っとらんかったか」 と上司は呟いた。


フォロー不可能である。

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2006年3月 8日 (水)

んふ あは

東洋人なかんずく日本人が英語を喋るということが小林克也氏並みに余程本物っぽくしないとやっぱり中途半端で不自然に感じてしまうのは英語が喋れない僕のひがみなのであろうか。


片言の英語なら僕も喋ることは出来る。ような気がする。
いや、喋るのではなく単語を羅列しているだけなのだが。

仕事で一度スイス人と話したことがある。


彼が応接室に居る時に僕も同席していたのであるが(何の用事だったかは忘れた)、ふとしたことから二人きりになってしまったことがあった。
彼は僕が英語を喋れないことを知っている。取り付く島もない僕は目が虚ろになっていた。動きも心なしかギクシャクしてくる。
スイスといえば母国語はドイツ語の筈である。あちらの人は結構語学に堪能でらっしゃるのか、普通のビジネスマンでも大抵が英語も話される。文法が同じなのかな?分からないけれど。

でそのスイス人。大きい。2mくらいありそうだ。関係ないが。
彼は応接室内をキョロキョロとし、僕のために何か話題を探してくれている様な感じである。

と、彼の視線が壁の一点で止まった。で「ワッツザッ?」 と聞こえてくる。
目を合わせないようにテーブルの上の資料を黙々と読み続けていた僕は思わず顔を上げた。場の空気と流れから「アレは何?」と訊いていることはすぐ解った。
「aha」 とこの場合においては訳の分からない感嘆詞を僕は用い頭の中でグルグルと単語を探した。
「え~…んー あ サンクスフル、サンサンクスフル、サンクス」 完全にドモっている。

「サンクスフゥ?」
「イエス。メニサンクスフル」 必要以上に頭を振ってしまう。日本人というものは落ち着きが無いと思われてしまいそうだがこの場合もう完全に一杯一杯なのである。

「アプリシェイション?」
あーっそうだ。感謝だ。サンクスじゃないような気がする。何故ならそれは額に入れられている感謝状だったのだから。
「イエスアプリシエイション」
そこで上司がガチャッと部屋に戻ってきてくれてそのまま会話は打ち切られる。ですぐ仕事に入っていく。何事も無かったかのように。

ま、意味が通じればいいわけであるから。あれはあれで良かったのである。と信じているのである。


うちの会社の社長は英語が堪能である。外人さんとも対等に話している。ように見える。実際はどうなのか僕にはよく分からない。判断のしようも無い。
しかしこの口癖があることだけは少々どうかと思われる。

こちとら日本語で会話しているにも関わらず、会話の節々に「んふ あは」が入るのである。
これを外人さんが使う場合、あくまで自然な感じの「Uhm Aha」となる。


しかし日本人が闇雲にこれを使うとやはり「んふ あは」としか聞こえず非常に何とも言いようのない侘び寂び感を醸し出してしまうと感じるのは僕だけなのであろうか。
しかもエレベーターで二人きりになった時に会話が無いにも関わらず僕の方を見ながら「んふ あは」と言われると非常に、怖いのである。

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2006年1月22日 (日)

原因は怪力

どうも視力が落ちたような気がするのである。


疲れが蓄積しているのだろうか。目に。
いわゆる眼精疲労である。

考えてみると昨年3月に部署が変わってからこの方一日中パソコンのモニターを見つめていなければならなくなった。
冗談抜きに仕事している間殆ど一日中睨めっこなのである。モニター君と。
だからなるべくモニターから目を離す様に気をつけてはいるが、なにぶん入力や確認に神経を使わざるを得ないのでどうしても目が疲れる。
そして約10ヶ月。1年前に替えた眼鏡では追い付かなくなって来ているほどの視力の低下を感じてしまう。
奥さんはそりゃ老眼だよと最近その辺に神経質になってきている僕に言ってはならぬ台詞を言う。んなバカな。まさか。


会社帰りにマイカル桑名のキクチに寄る。視力を測ってもらうためである。
僕はずっとここで継続してメガネを買っているから過去のデータの蓄積もある。
この際、徹底的に現状把握比較検証しなければ気が済まないのである。

事情を話す。
どうもピントが合わないんです。本が読みづらく感じるんです。
そうですか、じゃあ一通り測ってみましょう。
で測定して貰う。念入りに。たっぷり30分ほど時間をかけて。
で結果。

一年前と変化なし。
僕は左眼の乱視が結構きついのであるが、それも変わっていないとのこと。

・・・。
いや・・・そんな筈ないんです。おかしいですね?何かが。だって現に見えづらいんですもん。
うーん と思いながらも科学的測定結果をとりあえずは飲み込む。


すると閉店間際に30分もかけて正確に測定してくれた店員の女性に対して何だか途端に申し訳ない気持ちになってきた。
明らかに視力が低下しているならそれはお店側にとっても商売にもなるだろうからやった甲斐があるようなものだし、僕だって何らかの対策を立てる事も出来る。
それが変化無しという結果である。
双方共に何となく、気まずい雰囲気になる。これではまるで僕が変な言いがかりをつけているようだ。

結論として、それは視力低下ではなく疲れ目で見えにくくなっている様に感じるのでは?とのこと。
気のせいってことか。うーむ。
でもまあ結果は結果。仕方ない。

折角だから少しゆがんだフレームを直してもらおう。結構子供にいじられているからなあ。
こないだなんかこんなんになっちゃったんですよ、急いでたから自力で無理矢理直したんですけどね と店員さんに教える。
megane


子供は、意外と怪力なのである。
それは、普通ではありえないもはや眼鏡と呼べない物体を目の当たりにした朝であった。


「あははっ!それは大変」と店員さんは厭な顔ひとつせず直して下さった。
閉店間際なのに訳の分からない勘違いもはなはだしい客を相手にこんな儲からない仕事を押し付けてしまって申し訳ありません。本当にありがとうございます。

でゆがみを直して貰った眼鏡を受け取る。
そしてそれをかけた刹那、僕はあることに気付いたのである。


よく見えるのだ。
「あの・・・気のせいかもしれないですけど・・・よく見えるんですけど・・・?」


その瞬間二人の間で殆ど同時に僕の訴える症状の原因が炸裂した。

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2005年12月14日 (水)

背筋がゾッとする話

恐らく丑三つ時の時刻だったと思う。
何とも厭な音を聞いた。
今こうして思い出すだけで身の毛がよだつ。

「ぎぎっ・・・ぎぎぎっ・・・」


時間は確認出来なかった。思いがけずあまりにもゾッとしたからだ。
僕は恐怖のあまり布団をかぶって耳をふさいで寝ようとした。
そして音のする原因を考えた。それは間違いなく寝室の扉がゆっくりと開く音だった。

それが夏場なら僕は納得できる。窓を開けて寝室のドアを半開きにしていたとしたら風が吹いてドアを揺することがある。
だが今は真冬だ。早朝は氷点下近くまで気温は下がり雪が舞ったり霜が下りる季節だ。
当然窓は閉め切っている。当たり前だ。だから部屋の中に風が入り込むはずなどない。

ならば何だ・・・?
ドアをゆっくり開けようとしていたものの正体は一体なんなのだ?


その後再びドアが動くことはなかった。
妻や子供は小さく寝息を立てて安らかに眠っている。
僕はドアを背にし、布団に包まって身を小さく縮ませたまま、ひとりガタガタ震えながらまんじりともせず朝を迎えた。


翌日、普段通りの一日が過ぎた。本当になんでもない一日だった。

そしてその日の晩、眠りに入る間際に僕は昨夜のことを思い出し、僕が体験したその事を妻に告げた。

そしてその時、僕は衝撃的な事実を妻の口から聞かされ、文字通り背筋が凍るほどの思いをすることになる。
その驚愕の事実を知ったこと・・・それはまさに背筋がゾッとする恐怖体験であった。


妻は一言。軽~くこう言った。
「ああ、昨日ね。今朝見たら窓開いてたよ。網戸だったねぇ」

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2005年11月 8日 (火)

次こそといつも思う

信号待ちの時、おじさんと目が合った。


バスを降りると大抵僕はすぐ煙草に火をつける。癖になってしまっている。
公共交通機関の車内は完全に禁煙だから降りた途端に反動が来るのだ。

で、バスを降りてすぐの信号で待っている時。
おじさんはいつからその場所に立っているのだろう。散歩の途中だろうか。
作業服のような風合いの格好をしている。なぜさっきの信号で渡らなかったんだろう。
おじさんは、ここで幾つ信号の黄色を見ていたのだろう。


そして僕が煙草に火をつけるのを見て、おじさんは僕に近寄り声をかけてきた。
「火、いいですかね。持ってなくて」
おじさんは少しオドオドした感じの笑顔を作っていた。

彼は火を借りるためにここで誰かがバスから降りてくるのを待っていたんだろうか。そんなこと僕には知る由も無い。
平日の夜、普通大体バスを降りたら後はまっすぐ家に向かうだけだ。その中のどれだけの人がバスを降りた途端に煙草に火をつけるのだろう。きっと多くは無いと思うのだけれど。
それから持ってなくて って忘れたわけじゃないような含みを感じる。はじめから誰かに火を借りるつもりで出かけてきたように受け取ってしまう。なんか変だな。
夜道でもあるから変に警戒心が増長してしまう嫌いもあったかも知れない。
でもまあ、いいけどさ。火ぐらい。
そう思いながらも何かおじさんに他の意図がありそうな気配を感じてしまった僕はちょっと腰が引けていた。


幾ら使い捨てのターボライターとはいえ風が強かったから手で囲ってあげればよかった。
僕は偉そうに片手でちょっとだけ火をつけてあげてさっさと踵を返して歩き出してしまった。
後ろで、おじさんが火種を絶やさないように前屈みになっている姿を想像した。
おじさんはただ単に、きっと散歩の途中でライターを忘れてきてしまったことに気が付いたのに違いない。
僕はその時に確信した。


火が付きかけの煙草を無理に焚きつける時の味は決して美味しくない。
見ず知らずの気弱そうなちょっとおかしな雰囲気のあるおじさんではあったが、そんな思いをさせてしまったことに僕は少し後悔し、自分の傲慢さを恥じた。

おじさん、今度目が会った時こそ。

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2005年10月19日 (水)

虎?馬?・・・鹿??

夜からスーツに着替えて出かけなければならない用事があった。


仕事から帰ってきてそそくさと夕食を摂りすぐまた子供達をお風呂に入れてとりあえずお水を一杯だけ飲んでスーツに着替えて子供の姿もろくに確かめず家を飛び出し車のエンジンをかけた刹那。

しかッときた。


ある朝にしかッ しかッ としたことは過去に書いたが、今度は夜にしかッ ときた。


これは以前に体験したことのある感覚だ。
咄嗟にあの朝の悲劇が脳裏をよぎった。

しかし僕は既にもう学習している。
もう二度と慌てて押さえつけたりなどはしないぞ。決して。

そろりそろりと車を降り、それでいてスピーディに玄関までがに股で戻る。
玄関に入るなり妻を大声で呼ぶ。
「何かおる。パンツの中になんかおるんだて!」
ビックリした子供達が玄関に詰め寄る。「パパぁ?」


父ちゃんは、スーツの上着を着たまま下半身丸出しになりアピールする。「何かおるんだて!」
子供は喜んでいる。むしろパパが必死の形相をしている時くらい子供が喜ぶものはないのだ。


そして冷静に検証した結果、真因は虫ではなくカピカピに乾燥したご飯粒がパンツにこびり付いていたのだということに落ち着いた。


シカっ が僕はトラウマになっている。

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2005年10月18日 (火)

BGM

久しぶりにまとまった話をすることが出来た。

道中、往復約3時間。
僕の車で、僕の運転。
運転席と助手席。

二人で、いろんな意味で「同じ方向」を向きながら、話をすることが出来た。
なかなかきっかけがないと彼とは落ち着いて話をすることが出来なくなっていたからいい機会だった。
男同士、胸襟を開き、腹を割ることが出来た。


でも彼はどうしても気になることがあるようだった。


「どうする?替える?」と僕は訊いた。
「別にいいんだけどね・・・だって、しょうがないよね」と彼は答えた。


暫くしてから僕はもう一度訊いた。
「やっぱり替える?」
「・・・うん」と彼は答えた。


僕は『おかあさんといっしょ』のCDから、マイケルジャクソンのものに静々と取り替えた。

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2005年8月 6日 (土)

スイッチョン

昼過ぎから我慢に我慢を重ねたが遂に限界に達した。
隣りの上司に一声かけてビルの外へ飛び出した。
目指すは対面のビルの一階にあるお店だ。


自動ドアを開けるのももどかしく(今ではもう顔馴染みとなった)店長に一方的に訴える。
「仕事が手に付かないんです。夜も眠れないくらいなんです」


経験に基づいた言葉には説得力がある。そして店長曰く。
「僕も先週山に行きまして。それでこれです」とズボンを捲って見せてくれる。正に僕と同じ症状だ。同志だ。
「あー!僕とおんなじです。これです」
「はい。僕も夜眠れないくらいです」
僕はすっかり意気投合したような気になりこう言った。「そうですよね!一番強烈なヤツを下さい」

でもそれからは向こうも商売である。
「これとこれがいいと思いますよ」と手際よく値の張りそうなものをいくつか見立てて目の前に並べてくれる。確かにどれも効きそうだ。
でも幾らするんだろう。で聞いてみた。
「こっちのこれは幾らなんですか」
「1470円です」
「これは?」
「1200円です」
「・・・どれも結構するんですね」
「はい」
うーん。しかし高いなあ。先にこっちが弱みを見せちゃったのがいけなかったかなあ。
買うの止めて家から持参してきた液体ムヒでまた誤魔化そうかなあ。


最後に聞いてみた。
「店長はこのうちのどれを使っているんですか?」
彼は一瞬躊躇して、こう答えた。
「僕は、実はこれに別のものを混ぜて使っているんです」
ほら~。思った通りやっぱり隠してたんだ。秘密兵器を。
そしてそれは今見せてくれたものより絶対安くて絶対効くに違いないと僕は確信した。

店長はカウンターの向こうの奥まった所から見たことも聞いたこともない薬を引っ張り出してきた。
いよいよ真打ち登場といった感じだ。最初からそれ出してくれればいいのに。
パッケージにはこうあった。
『スイッチョン』
強烈そうだ。

「これはね・・・アンモニアが配合してあるんです。市販の痒み止めでアンモニアが入っているのはこれくらいです」
しかも値段も千円以下。「これ下さい」迷う意味が無い。


店を出る時に僕は付け加えた。
「名前からして絶対効きますよね!」よく意味が分らないけれど。
でも店長は、親指を立てて応えてくれた。

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2005年7月 9日 (土)

痕跡

エレベーターを降りるとすぐ右手にガラスの自動扉がある。
久屋大通に面したビルはテレビ塔の真東に位置する。屋上にコルゲンコーワの看板がある。
今から10年以上前、オフィスが移転する前の時のこと。


ビル管理業者により常にガラスは綺麗に磨かれていた。
うっかりするとそこにガラスがないと錯覚するほど。
まあ、どんなビルでもそれはありふれたことだからそれは別段珍しくもないけれど。


ある時、その綺麗に磨かれたガラスに大きなヒビが入っていた。
床から1m50cmくらいの位置。
誰かがきっと、誤って何かをぶつけてしまったのだろう。
大きな一枚もののガラスだから、弁償すると高くつくだろうななどと思いつつ。
ヒビ割れを横目に外に出ようとした時。
見つけてはいけないものを、僕は見つけてしまったのだ。


ヒビの入ったポイントをよく見たら、そこには痕跡があった。
思わず、声が出た。「あ~・・・あぁ」
それは、真っ赤な口紅だった。


なんともフォローのしようのないそのシーンを想像し、僕はとっても悲しい気持ちになった。

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格闘

帰宅すると嫁が涙目で訴えてきた。
またチビすけとヒトモンチャクあったか?と思いきや、和室に何かがいるという。
それが何かは分らない、確認する前に逃げてきた。
ただ触角だけが見えたと。
その瞬間僕は、己の義務を悟った。


こちとら仕事で疲れ果てて一刻も早くご飯と食べるかお風呂に入るかしたいのに。
で手渡されたのは今朝の中日新聞丸ごとと、そして未開封の「瞬間・凍結なんとかコロリ」なるもの。

ヨッシャ任せとけと父ちゃんカッコよく後ろ手に和室の襖を閉めていざ戦場へ。
まるでエイリアン第一作目、火炎放射器片手にダクトの中に入ってゆく宇宙船ノストロモ号のダラス船長のようだ。
自分が入ったダクトの入り口を溶接までさせて。凄い勇気というか根性。
alien_daras
最終的に彼は繭にされてしまうが。
そんな忌まわしいシーンを振り払いつつ。断固たる決意で。


少しの音も聴き逃すまいとエアコンはOFF。そうカサカサ音や羽根音だ。
実際、ちょっと聞こえてくる。確かに、いる。
じんわりと汗ばんでくるがそれが冷や汗か何なのかは分らない。
今にも胸から飛び出すんではないかといわんばかりの心臓の鼓動。

和室のテレビの上部分、エアコンのすぐ脇の鴨居の裏側にさっきチラッと触角が覗いたのを僕は確認した。
恐る恐る。慎重且つ慎重に。テーブルに登り、片足をテレビの上に掛け、そして最終的にターゲットが目の前わずか30cm以内のポイントに間違いなくいるところまで接近した。
新聞紙を丸めたのを左手に持つか右手に持つかで一瞬悩んだ。何故なら利き手の右手首は先々週に捻挫してからまだ完治していないからだ。
しかし体勢上右手に新聞紙では効率が悪いことを鑑み、いざという時は玉砕覚悟で左手に丸めた新聞紙そして右手に凍結殺虫剤を構え臨戦態勢に入った。

逃げ場はここしかないと確信する箇所から強烈な一撃(と言っても腰の引けた体勢で飛び出したスプレーノズルの先端をターゲットに向けて噴射しただけだが)をオリャーとばかりに食らわしてやった。
次の瞬間。気がふれた様に鴨居の裏で暴れまくるターゲット。一瞬、姿を見せた。腰がくだけそうになった。
だが次の瞬間また姿を隠し、鴨居の中を右往左往している音だけが聞こえる。

ここまで来たら行く所まで行くしかない。
何しろ無言で戦っている父ちゃんの生還を隣のリビングで待っている家族がいるのだ。ここで朽ち果てるわけにはいかない。僕には戦う理由があるのだ。
・・・などと冷静に考えれる状況では決してなくその時の僕の目的はただ一つ、確実にターゲットを仕留めることのみだった。
音のする部分に集中砲火を浴びせ、そして遂に全く生きている気配がなくなるところまで持ち込んだ。
気がついたらスプレー缶が軽くなっていた。殆ど使い切ってしまったようだ。
だがまだ鴨居の裏側に間違いなくいるそいつ。確実に息の根を止めた手ごたえはあるが。
でもどうしてもそれを確認することが僕にはできない。
絶対に、出来ない。


「終わったよ」
精も根も尽き果てて、リビングの扉を開けた時。
そこにはテレビでお笑いを見てガハハっと笑っている妻と子供の姿があった。「あ、終わった?ご飯にする?」
か軽いね・・・。
俺さ、泣きそうだったんだぜ。


ま、子供の無邪気な顔見るとさ、さっきの辛さなんか全~部吹っ飛んじゃうんだけどね^^

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2005年6月30日 (木)

涙だけは出た

一人暮らしをしている時。
スーパーに買い物に行って、よく梅昆布茶を買った。
さじで粉末をすくって白湯の中に落として溶かして飲むやつ。顆粒梅の粒々が浮いてたりして。
その香りと味を想像しただけで唾が湧いてくるような感じ^^美味しくて味わい深い。
僕の中ではかなり好きなものの一つだ。
痛い思い出を除けば。


梅雨時。
暫く蓋を開けていなかった昆布茶の缶を開けたら湿けっちゃってて、中身が固まってた。さじでツンツンしてもガビガビな感じ。
でもどしても昆布茶飲みたかったから固まったやつを砕いて、で一杯分のかけらを湯飲みに入れて、お湯を注いで昆布茶を作った。
湿っても味は変わってなかった。美味しかった(^^)粒々の食感ももいい感じだ。
で・・・お替りを飲みたくなった。

そしてもう一度缶の蓋を開けて、一杯分の欠片をさじですくおうとした時。
見てはいけないものを僕は見てしまったんだ。


さっき砕いた湿って固まっちゃってる粉末の塊はまだそのまま其処にあった。
でも不思議なことにその塊が動いているんだよ。勝手に。コロコロと。
はじめは目の錯覚か僕の手が震えてるのかと思ったよ。だから缶をテーブルの上に置いてみたんだ。
でも相変わらず塊は動いてたよ。
そしてその時僕は、絶対に認めたくない事実が其処に存在していることを確信したんだ。


恐る恐る塊を小さく砕いてみたよ。慎重に。そう、慎重に。祈るような気持ちで。
そして大きな塊がパカッと割れた時、僕は見たよ。


其処には一生懸命生きていることをアピールしている存在がいたよ。無数に。
ちっちゃくてもね、僕等はみんな生きてるんだ。

喉に指を突っ込んでトイレに駆け込んだけど、涙以外何も出てこなかったよ。
一人暮らしをすると、色んなことを学ぶんだ。

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2005年6月27日 (月)

蜘蛛の糸

虫の多い季節になってきた。

自慢じゃないが僕は虫が苦手だ。
いや、苦手などというレベルではない。虫という虫、全部生理的にダメだ。
普通の人が嫌がる虫も勿論嫌いだ。例せばムカデ、ゲジゲジ、チャバネゴキブリ、クロオオゴキブリ 等云々。
特に動きのスバシコイものがダメだ。人間の動くスピードでは絶対に追いつけないからだ。
そいつらがうちの中に現れた時、奥さんの手前上平気な顔して新聞紙と殺虫剤を二刀流のように構えて僕は戦うが、内心は涙が出るほど恐いんだ。


中でも(こいつはゆっくり動くというか舞うけれど)どうしてもダメなものがある。
それは蝶々。てふてふ。
蛾 とかじゃない。蛾も勿論ダメだが。
モンシロチョウやアゲハチョウ等のややもすると愛玩性のあるものだろうがダメだ。小さいものから全てダメ。
予測できない変な飛び方、リンプン、あとあの・・・人の指をつまむ様に立つあの足と、そして身体に不釣合いな大きな羽が、ダメなのだ。
でも小学生の時は平気だった。
毎年夏休みになると昆虫採集箱を肩にタモでよく捕まえてたくらいだ。


その日、僕は友達と野球をして遊んでいた。
夾竹桃の林に囲まれた小さな公園。
外野を守っていた僕は、大きく外れたファウルボールを捜しに藪の中に入っていった。
夾竹桃の枝を掻き分け掻き分け、どんどん中へ。夾竹桃って薄紅色の綺麗な花が咲くんだよ。

でようやく転がっているボールを発見するのと、そいつが目の前に現れるのとが同時だったんだよ。

突如として僕の目の前に現れたそいつ。
そいつは・・・目測で端から端まで15cmはあろう大きな蛾。
でも至近距離で見てしまったから小学生の僕にはデフォルメ抜きで30cmくらいに感じたよ。
そいつの羽には外敵から身を守る為に大きく装飾された鷹の目のような二つの模様。そして僕を恐れることなくゆらゆらと羽を動かすそいつ。
思惑通りその二つの大きな目は僕を射抜き、その場に腰砕けになるほどの衝撃を僕に与えることに成功したよ。
野球などほったらかし、僕は本気で泣きながら家へ飛んで帰って行ったよ。

そしてその日以来、僕はヒラヒラ舞う蛾や蝶はおろか虫という虫全てがダメになっちゃったんだよ。
それ完全なトラウマだよ。
どこかの植物園には蝶を放し飼いにしているところがあると聞くけれど、僕は死んでもそんな処には入りたくない。


あと蜘蛛も、ダメだ。
大体こいつ昆虫じゃないでしょう。脚が多いムカデなどとは別格の8本足の蜘蛛。生物学的には虫になるの?それとも蟹の種類??知らない。


夏のある時。
何の用事だったか連れと二人で夜の山道を談笑しながら歩いていた。
前方1メートル以内の所に、常夜灯に照らされて何かキラッと光るものがあった。
道の両側の木から大きく張られたそれはそれは見事な蜘蛛の巣だった。真ん中にでっかい女郎蜘蛛の化け物みたいなのがいた。
僕が先にそれに気付いて「あ」と声を出すのと、僕の声に気付いてほんの少し前を歩いていた連れが僕の方を見るのと殆ど同時だった。

彼は、女郎蜘蛛の背中部分に耳から突っ込んで行った。

そのあと、己の頭部や身体に巻き付いた蜘蛛の糸を必死の形相でキチガイのように物凄く速い動作で必死に取り除こうとする友の姿が僕の眼前にあったが、僕は手伝う事がどうしても、出来なかった。

友よ、ごめんな。

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2005年6月23日 (木)

ライブ!アット・ザ・SGC

僕の仕事は主に事務作業だ。
業者さんに注文書を切ったり、納期や購入価格の交渉をしたり。
生産管理という課。まあそれは本題とは何の関係もないからどうでもいい。

僕の席の横には上司の机がある。
僕の机に対して90度の向き。一体どういう配置なんだ。誰が考えたんだ。
でだから仕事中は始終上司の視線に晒されており、従い仕事で必要な時(特定の商品の市場価格を調べたりするなど)以外はネットを覗けない。
四日市の時は良かったなあ。殆どの時間独りで過ごしていたもんなあ。快適なサーフィンをすることが出来たなあ(勿論仕事でです)。あそれも関係ない。


事務所で仕事をしていると、偶に大方の人が出掛けてしまって割と長い間静まり返るような時間がある。そんな日は電話が鳴る回数も少ない。週半ば午後のちょっと気怠るい静かなひととき。
離れた席から聞こえてくるキーボードをカタカタと叩く音。女性事務員が事務所の入り口近くに置いてあるユニマットのコーヒーを入れ替えている音。

こんな日は普段やり残している宿題や長期的テーマで取り組んでいる仕事などを片付けるのに丁度良い。集中できるからだ。
その日もそんな感じだった。


突如、静寂を切り裂く爆裂音が事務所中に響き渡った。
その音を何と表現すればいいだろう。
「ばおッ」か「げばッ」か「ぶひッ」か。
うん。・・・「ぶひッ」ですな。

音のする方を振り向くと、上司が机に向って(イコール僕の方に向って)飲みかけのお茶を噴き出している光景が目に映った。
スローモーションに見えた。

ロックアーティストがライブ中に口に含んだ水をブワッと霧吹きみたいにするようだった。それは凄くカッコイイパフォーマンスなのだけれど上司のは何とも表現しがたい。フォローのしようもない。出来ることなら見て見ぬ振りをしたかった。

ライブ!アット・ザ・仕事中という言葉がとっさに浮かんだ。
それは紛れもなくロックだった。

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2005年6月 5日 (日)

どうしても伝えたいこと

4年前(だったかな?)の夏の暑い日。

少し寝坊してしまって、時計と睨めっこしながら慌てて朝ごパンを食べて、そそくさと仕事着に着替えようとした時。
ふと思い出した。

そういえば昨夜はバンドの練習で遅くまでスタジオに詰めて、そのあと下の喫茶店で遅くまでマスターと駄弁って。帰りが午前様になってしまったからお風呂は止めにして寝てしまったのだった。
・・・ということはパンツを替えずに寝てしまったわけだ^^;
前述の通りお風呂は入らなくても平気だが、いくらなんでも連続パンツはマズイっす。しかも夏だ。仕事中に漂っては業務に支障をきたすッス。

焦って一度履いたズボンを脱いで、履き替えようと箪笥から新しいものを引っ張り出す。マジで時間がヤバい。
そしてパンツを履いた刹那。シカッと。突き刺すような小さい痛みが。袋部分に。
(アレ・・・?何か挟まったか?アタタっ)と思うも束の間。小さな痛みが途端に激痛に。
「アタタっアチ~」と局部を強く押さえて飛び上がる。なんだこれ?!こんな痛いの初めてだわ。
押さえた局部をもう一度小さい痛みが襲う。そしてまたそれが激痛へと変わる。
正しくこれは異常な事態だ。何かが僕自身に刺さったようだ。

脱いだパンツをチェックしてみる。
するとそこには目を疑う光景が。
冗談抜きに、本当に目を疑った。

何とそこにはモゾモゾと動く小さなものが。
顔を近づけてよく見てみると・・・虫だ。
そしてそれは、ああ・・・何ということだろう。紛れも無いアシナガバチだったのだ。

一瞬にして全身から血の気が引いた。
その時は恐怖と怒りで痛みすら忘れて半狂乱になりながら^^;スリッパでパンツを叩きまくり、敵を完膚なきまで木っ端微塵にした。


我に帰ると再び痛みが襲ってきた。
痛みを堪えながらも何とか平静を取り戻し、腕組みをしながらたった今わが身に何が起こったのか整理してみた。
下半身丸出しで。


まず。
何でパンツの中に蜂が居たのか。
きっと洗濯物を干している時に一緒に取り込まれてしまったのだろう。
しかし件のパンツは奥さんの手により綺麗に畳んであった。
自慢じゃないが僕はパンツのストックは一週間分は確実に持っており、そして物流における在庫品を扱う基本中の基本「先入れ先出し」は忠実に遵守している。
昨日の時点で抜かれたものの位置から察するに、今日取り上げたパンツは恐らく最低でも4日前に洗濯されたものだ。
ということはこの蜂野郎は暗い箪笥の中で絶飲絶食で4日間生き延びてきたわけだ。オモムロにさっきの自分の半狂乱の所業に少々後悔の念がよぎった。
いや待て待て違うぞ、俺は被害者なのだ。

そしてクライマックス。
遂に件のパンツが日の目を見る時。
あろうことか彼はいきなり生温かい何かに押し潰されようとしたわけだ。で彼はとっさに攻撃を仕掛けてしまったのだろう。今まさに自分を押し潰さんとする生温かい何かに。
しかも相手(僕)は第一次攻撃で怯むどころか更に力任せに抑えつけてきた。よーしもういっちょ食らわしたれ!ってなもんか。


そんなことよりしかし・・・はあ(>_<)痛いなんてもんじゃなかったスよ。
こうなったら仕事どこじゃない。
場所が場所だけに医者行って診て貰わないと気が気じゃない。
内股になりながら会社へ電話。

「すみません病院行ってきます遅れます」
「どしたん?」
「あの、蜂に刺されまして」
「どこを?!目か?」
「イエ、あの…キ○タマです」
「・・・」しばし無言。
「ドコて??」
「キ○タマです」二度も言わせんな。
「・・・ガハハッ」笑い事じゃない。


思いのほかウケたので気を良くした僕は^^(アッ!これバンドのメンバーにも伝えなきゃ!)と思い早速メンバー一同に同報メール。
伏せ字無しで一言。
「キ○タマ蜂に刺されたッ レノ」

後から聞いた話だとサマーは出勤途中の近鉄の中でメールを受信したらしい。
満員電車の中で涙を抑えながら笑いをこらえるのに必死だったと。何ちゅうメールをよこしてくれるんだと。


しかし病院に行ったはいいが、受付で看護婦さん(しかも若くて可愛らしい)に「今日はどうされました?」と尋ねられた時の切なさよ。
「(消え入りそうな声で)蜂に刺されまして…」
「そうですか、でどちらを?」
「・・・・デス」
「…はい?」
仕方ないからハッキリ言ったわさ!そしたら「あ、そうですか。じゃあこちらでお待ち下さい」って。別に驚いた風でもなく。ま、当たり前か。

担当の医師がこれまた女医さん。今日の俺どこまでツイテないんだ。
「あー二つ刺されてますね。スズメバチじゃないんでしょ?この腫れ方は」
「はい。アシナガバチと思います」
「まあじきにひくと思いますけどお薬塗っておきましょうね」
でまあちょちょいのちょいでしたね。


それで後日談。
このネタ^^ライブのMCでトニーに取り上げられるし。
お陰でこの一件でもって僕の虚弱なイメージが一層強固になったし。
会社の人たちからは「最近笑いに飢えてたからこれで数日は笑えるわ」と言われるし。

サマー曰く「ところで何でそんなことみんなにメールで送ったの?」
僕答う「だって…どうしても誰かに伝えたかったんだもん(^^)」

なんじゃそれ(笑)

hyousatu_thumb
とももさんに画を頂戴いたしました^^;)

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2005年5月30日 (月)

カミミュズ=???

仕事で栄から地下鉄に乗る機会があった。
地下鉄名城線。終点の名古屋港へ行く用事。

桜通線は割とよく乗るけど名城線はホントに久しぶりだ。
以前僕は当時の自宅の最寄駅である築地口から栄まで毎日毎日地下鉄に乗っていた。
もうかなり前になる。高校時分の頃を含めると…20年以上前。大昔だな。
まだ地下鉄が黄色い電車だった頃。その頃の名城線は(東山線もそうだったけど)シートはブカブカでクッションが良いのか悪いのかわからない状態だったんだ^^今で言う低反発枕みたいなものかな?座ると頭の位置がかなり低いところまで来るんだ。


その日、僕はセントラルパークを南に向って降りたすぐのところで切符を買おうとしていた。
切符売り場ではちょうど外人さんが同じように切符を買おうとしているところだった。名古屋でそれは別に珍しくもない光景。桑名だったらちょっと目立つけど^^
で僕がその外人さんの後ろに並ぶと、慌てたように彼は僕に列を譲った。
チラッと横目で見るとまだ若い。見た感じ学生さんのようだ。
どこの国の人だろう。黒人さんを見るとみんなアフリカ人に見えるのは偏見かな?偏見だろうな。
それにしても背が高いな。190くらいあるんじゃないか。

で。名古屋港までの切符を買って、改札口に向おうとするとその外人さん(面倒だから以下アーノルド)に呼び止められた。
「アーアノスミマセン!」
僕は韓国語は得意だが英語はちょっと自信がない。だけど振り向きざまに僕はこう答えた。「Yes?」
…とっさに出る時は出ますよ。日本人でも。僕でも。イエスぐらいはね。でも一瞬心臓がバクンと言った。

「カミミュズ、ドコデスカ」と訊くアーノルド。メモを片手にどこか不安げな表情。目が潤んでいる。僕も潤んできた。
どうやら路線図と睨めっこした挙句行きたい駅が発見できなかった様子だ。
(カミミュズってなんだ?)と思いつつ彼が差し出したメモをよく見てみる。汚い字だなこりゃ。字かこりゃ。

メモを彼が指差す先には『KAMIMAEZU』とあった。「カ、ミ、マ…ああ上前津?」
「Yes!カミマエズ」アーノルドの顔がぱっと明るくなった(^^)つられて僕も笑顔。…ちょと引き攣ってたけどね^^;
「This. Here...」僕が路線図を指差すと彼は指先を目で追った。「Two hundred Yen」
「オーイエス!」通じた!やったぞ!
待ってる僕を横目にそそくさと上前津までの切符を買ったアーノルドは、手に取った切符を見せてニコッと笑顔を見せてくれた。

折角だから案内してあげよう。どのみち通り道だし。
一緒に改札を通って、自信たっぷりに金山行きの方にエスコートしてあげた。
「This, here」(しかし俺これバカの一つ覚えみたい^^;文法的にはどうなんだ?^^)
でも頷いて着いて来るアーノルド。よし。いい雰囲気。僕を信頼しきっている様子。かわいく思えてきた。
でウケ狙いで思いきって言ってみた。「コッチ!」・・・受けた^^


電車を待つ間。
少し会話を。やっぱり今の時代グローバルに生きないと。
「Where are you come from?」お決まりの文句を言ってみた。
「エクアドル」・・・と言ってるように聞こえた。もしかしたら「エマニエル」だったかもしれない。
何しろザワザワした地下鉄の構内だ。いくら僕のヒアリング力を持ってしても聞き取れないものは聞き取れない。
エクアドルってアフリカか?南米じゃなかったっけ。黒人さんはいるのかな?どちらにしても二度も訊けないし。ましてや「Excuse me pardon?」なんてとても恥ずかしくて言えないし。
仕方なく僕は解ったような振りをしてはにかみ笑いをして頷いた。

地下鉄に乗り込んで、ドアの上に掲示してある路線図を指差してまた説明。こうなったら一方通行でも構わない。
「Next,Yabacho. and next...Kamimaezu」
「uhn」 いい感じだ。
調子に乗って懲りずに訊いてみた。「Why? You come Japan?」…なんだその英語!でも通じたみたいだ。「EXPO」ニカッと答えるアーノルド。
あーなるほどそーゆーことね。万博を見た帰りなんだ。で上前津に友達のアパートかなんかがあるんだ、きっと。さっきの汚い字はその友達の字なんだ。間違いない。
・・・と思ってもそれを表現する術が僕にはない。でも何とか伝えたいな。この想いを。うーん。

でもダメだな。日本語で考えて頭の中で英語に直して。それじゃ遅いんだよな。英語で考えないと。っていう間に文を考えているうちにやっぱり沈黙してしまう。
伝えたいって言う情熱が道を切り開いて行くんや・・・って何かのCMであったな。ホントにその通りだな。
俺、情熱だけはあるんだよ。


そうこうしているうちにあっという間に上前津に到着してしまった。お別れの時だ。
短時間ではあったけれど、僕は国際貢献をしたことになるんだよね?いいよね?アーノルド。そう思っても。
だから今度は僕の方からお別れの挨拶をした。
「Have a nice...nice...stay Japan!」
「Have a nice day!Thank you!!」
ペコッと頭を下げて、そしてアーノルドは電車を降りていった。


電車のドアが閉まるとき、振り返りながらアーノルドが手を振るのが見えた。
僕も、小さく手を振った。

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2005年5月25日 (水)

深夜バス

先日久しぶりに錦で飲んだ。取引先の人と。
前に営業にいた時以来だからどうだろう、10年ぶりくらいかもしれない。
多国籍の外人さんがおもてなししてくれるスナック というかクラブ。大人の世界。
ショータイムには度肝抜かれた。まあそれは本題じゃないから書かないけどね^^


僕の家が桑名だってこともあって、先方が気を遣ってくれたかどうかはわからないが23時には解散した。
高速バスで通いだして、こんなに遅くなったのは初めてだ。確か最終は23時半ごろだったよな。
とりあえず栄のオアシス21まで歩いた。で電光掲示板を見ると次のバスまであと45分も待たないといけない(-_-)
いくらなんでも待てないな。ちょっと寒いし。酔っ払って真っ赤だし。
どうしよう。近鉄でもいいけど、桑名駅から先が困るもんなあ。タクシーなんか馬鹿馬鹿しい位高いから乗れないよ。・・・財布ピンチだし。
とりあえず名駅まで移動するか。

でナナちゃん人形の下通って。あーラーメンいい匂いだな。
名鉄バスセンターに着いたら運良く大山田行きが出発間際だった。慌てて駆け込んだ。
どうやら最終便だったみたい。程なく満席になった。
今日平日だよな?確かに周りを見るとOLやらビジネスマン風の人やら、どう見てもみんな仕事帰りだ。
何でみんなこんな遅い時間までいるのさ。こっちは酔っ払ってフラフラなのに。何か申し訳なくなってきた。


「大山田行き深夜バス出発しまーす」運転手。

・・・え?なに??深夜バスてなにそれ?

普通の大山田行きじゃんねコレ?深夜バスってなに?普通のバスじゃないの?
これ深夜に走るから(当たり前か^^)深夜バスなんだよね?違うの?何であんた特別に深夜バスなんて言うのさ!?
・・・もしかして定期じゃ乗れへんの?
そんな僕の疑念をよそに定刻通りバスは動き出してしまった。
ええいままよ。乗っちゃったものはしょうがない。降りる時運転手に聞いてみよう。寝よう。

でも一度取り憑いた疑念はなかなか拭い去れない。
折角桑名までの道のりを安らかに眠ろうと思ってたのに。なんか不安じゃんね。寝たいなあ。


隣を見るとスーツを来た女性だった。ケータイをプチプチしている。見た感じ話しかけ易そうだ。
で・・・思いきって声をかけてみた。
「あの…」
「はい?」そりゃそうだ。誰だってこんなシチュエーションじゃキョトンとするさ。あ~キモイと思われたらやだな。
でも酒の力は偉大だな。僕は決してそんなタイプ(ってどんなタイプ^^)じゃないのです。シャイだから見ず知らずの人に話しかけるなんて。とてもとても^^
「深夜バスって…もしかして割り増し、なんですよね?…多分」
僕の心配をよそに、その女性はニコッと笑ってくれた。「ええ、そうですよ!」
「やっぱり。普段こんな時間に乗らないから」笑顔を見てホッとしながら。よかった、いい人で。
「割り増しって言うか、通常の倍額になるんですよ」

・・・なに?
なんだと?倍て??
じゃあいつも¥970だから・・・¥1940ってことか??マジすか。

「んーと、じゃあ僕の場合定期なんですよ、これはどうなるんでしょうね?」
「えっと、定期だと…あ、¥970区間ですね。だったらあと¥970要りますね!」
はぁ・・・まぁタクシーよりは安いか。しゃんないな。しかしミミッチイな俺も。
「わかりました(^^)疑問が解けました。これでゆっくり寝れそうです」
「はい(^^)」
「たしか回数券が一枚残ってたから…あ、あった^^」
「はい^^もうこれで大丈夫ですね!」


たまたまとはいえなんか楽しかったな。こんな会話もいいな。
人と話をすることって、大事なことだな。
落ち込んでいる時や、気分が晴れない時。
そんな時、誰かと話をするだけで知らないうちに元気になってたりすることあるもんな。
よし。明日からいろんな人に話かけていこうっと(^^)
・・・・・・キモ悪がられない程度に(^^)

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2005年4月 6日 (水)

新人に贈るエール

毎日通勤で高速バスを使う。帰りは栄のオアシス21から三重交通の大山田行きかネオポリス行きに乗る。

バスでの通勤を始めてから3週間が経った。ようやく慣れてきた。
だが乗り物酔いしやすい体質なので車中で新聞や本をを読んだりすることが出来ないのが残念だ。慣れの問題と会社の人は言うが、本当にそうだろうか。乗り物酔いだけは小学生の頃からちっとも治らない。

バスというものは電車とはまた違った空間だ。恐らくそれは乗り合わせた人が皆同じ方向を向いていることが関係しているのかもしれない。乗り合わせた誰しもが正面から誰の顔も見ることが出来ないという意味で。

朝はラッシュアワーであるためいつもほぼ満員となる。補助席に座る人が出たらその時点でそのバスは停留所を通過する。高速道路を通るため立ち席が認められていないからだ。
その代わり帰りのバスはゆったり座ることが出来る。相席になることも朝より比較的少ない。

その日の帰りもいつもの如くバスに乗り込んだ。お、お気に入りの2列目空いてるじゃん、ラッキー。
そろそろ発車時刻という間際になって一人の女性が乗り込んできた。
雰囲気から察するにあまりこのバスに乗り慣れてないらしいように見えた。つい3週間前の僕のようだった。
時間帯からほぼ満席になった車中を見渡したあと、彼女は入り口付近の隣が空いている席に腰掛けている僕に気がつき、声をかけてきた。「となり、いいですか」

気がつけば世間は新年度だ。街にはリクルートスーツを着た新入社員と思しき若い人たちが目立つ。
彼女もそんな感じだった。チラッと横目で見た限り清楚な感じではあるが反面どこか垢抜けてないような印象も受ける。

バスの中で二人掛けのシートが相席になること自体珍しいことではない。席が一杯だったら普通は何の断りもなくドカッと隣に座られる。女性だろうと男性だろうと。別にそれで気を悪くすることなどはない。自分だってそうする。
だからわざわざ断ってくれたちょっと不器用そうなそんな彼女に対して微笑ましい気分になった。「ええ、どうぞ」少し身体を窓際に寄せながら答えた。

高速道路を走っている時のバスの微振動はとても心地よい。連れがいる人以外は誰も喋らないし、運転手の無線の音だけが小さく聞こえてくるだけ。だから眠くはなくとも思わず眠気を誘われる。
バスが動き始めてから暫くの間はソワソワ落ち着かなかった彼女も、程なく静かになった。
僕はずっと窓から外を見ていた。

暫く経ってウトウトしかかった時、隣りの女性がゆっくり僕の方に傾いてきていることに気付いた。そっと横を見る。完全に眠っているようだ。
そしてバスが車線変更した弾みで、彼女の頭が僕の肩の上にあずけられた。

こういう時はどう対処したら良いのだろう。
もしそれがオッサンならエイとばかりに肩を上げて弾き返すところだ。
だが今回のケースはこうだ。想像するに隣人は初めての職場で緊張しながら慣れない仕事をし、そして疲れ果てた挙句車内で意識がなくなるほど眠りこけているか弱き女性だ。僕に下心など当然あるはずもない。ましてやこんな車内で何がどう出来る訳でもない。
ふと冬ソナのユジンとチュンサンを思い出したが、そんなロマンティックなものではない。こっちだって疲れてるんだ。
でも僕の肩に預けられた彼女の頭を振り払うことはあまりに無慈悲のような気がしてとても出来なかった。
僕はまんじりともせず、静かに眠っている彼女を起こさないように少し緊張しながら首を窓側に傾けることにした。

高速の降り口にに差し掛かり、バスが減速した時に彼女は目を覚ました。僕は寝たふりをした。
彼女が姿勢を直したあと、僕も目が覚めたふりをした。

目的の停留所が近づいた。先に降りるのは僕の方らしい。
「すみません」と言って彼女に席を立って貰い、僕は停留所に降り立った。

春とはいえまだ宵は肌寒い。
遠ざかるバスを見ながら、明日も頑張れよ、新人。と心の中で彼女にエールを送った。

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2005年4月 4日 (月)

出会いの不思議さ

思いがけない時に、思いがけない人とバッタリ出会う時がある。

先日だしぬけにそんな場面に遭遇した。その人とは顔見知り程度の関係だ。申し訳なくもフルネームは忘れてしまっている。音楽を通して知り合った人だ。


滅多に行かない桑名駅前の某百貨店にフラッと買い物に寄った。駐車場に車を停めて、館内にある沢山のエレベーターの内の一つにたまたま乗った。目的の階の扉が開いた瞬間に、エレベーター前の専門店の中に居た制服を着たその人と目が合った。
当然の如く僕はその人がそこの専門店に勤めている事など知る由もない。
思わず声が出た。「あ、見た事ある人だ」独り言の様に小さく呟いたはずが確実にその人に伝わった様だ。こんな感じは良くある。口の形だけで言葉は聞えていなくてもお互いの言わんとする事が解り合っているというあの感じ。当にそれだった。

吸い寄せられる様にお互いが近づいた。
「あぁこちらにお勤めだったんですか」…もっと気の利いた事は言えないのか俺は。
「そうなんです。この近くにお住まいだったんですか?」
「いえ、ちょっと離れてるんですけどね、たまたま今日はここに寄ったんです」
「そうだったんですか…」妙に照れ臭くなって来た。で何とか言葉を継ぐ。「何処かで見たことある人だなって」
「私もそう思いました」
「…」
「…」
「じゃ、行きます。お仕事頑張って下さいネ」
「はい」

当たり前だ。会話の準備などしている筈などない。だがそれはお互い様だ。
でもその場を離れる時、何故だか顔が綻んでいた。映画やドラマの中の何気ないワンシーンの様だった。そんな偶然にワクワクした。


生きているだけで沢山の人と出会う。
街や駅などにちょっと出掛けるだけでそれこそ何千人の人とすれ違う。
それだけ沢山の人が居るのに、自分の人生には全く無関係だ。奇妙な事だけどそれが当たり前だ。
そんな中で、こんな出会いもある。不思議な事だけど。
袖すりあうも他生の縁、とはよく言ったものだ。


人生って、実はこんな偶然の出会いで成り立っているんだろうな。

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